FC2ブログ
2006-12-09

アマニタ・パンセリナ : 中島らも

 “好きだ”と思う作家、文筆家は何人かいる。その書き手が好きだからといってその人の書いたもの全てが好きなわけではないが、それらの人の著作の中には必ず、私の首根っこを押さえつけて降参させている一冊というのがある。

 中島らも氏に関して言えば、「アマニタ・パンセリナ」がその決定的な一冊だった。この本を読むと私は泣きたくなる。

 ドラッグを求める人、ドラッグがもたらすもの・・・自身の体験、古今の文献、文芸作品を引きながらドラッグを語るエッセイ。ドラッグに関しては私は知識も興味も無いが、ドラッグを語るらも氏の言葉は読まないわけにはいかない。

 自身の興味、好奇心をカバーする知識。知識に支えられて自己を把握する知力、精神力。その上で、「中毒」という生き方をしたらも氏。

 自分を苦しめもしたが、生き方として切れることのなかったアルコールやドラッグに関することを書物として出すとなると、自分の経験した至福も七転八倒も、読みやすく、面白く、思いやりに満ちた文章にして差し出す読者への気遣い。それだけの文章を書く技術。

 冷徹に世界を、自分を見つめながら、ふとした隙間からぽろぽろこぼれるセンチメンタルなもの。汚くてきれいな、らも氏。「中毒」という生き方を通し、その為に時折自失しながらも、自分は“生に向かって、ナンセンスに向かって、恐怖に向かって「開かれた」書物を書くだろう”と言ったらも氏。

 そういうものに触れて、・・・もう、何だか堪らない。

FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2006-10-20

君はフィクション : 中島らも

 中島らも氏が生前最後の時期に手がけていた作品を集めた小説集。未発表作品も含め10編を収録。

 ホラー、ユーモア、不条理、自伝的小説まで味わいの異なる作品が集められているが、発表年が最近のものになるにつれ、黒々とした何か・・・内臓の底に溜まり、又は皮膚をざわざわと嫌な感じに粟立たせるものが、作品の中にはっきりと姿を見せ始めているのが感じられる。以前読んだ「空のオルゴール」では、その黒々としたもの・・・悪意にも似た荒々しさは、まだエンターテインメントとユーモアに包まれて底に沈んでいたけれど、「それ」は徐々に生々しく姿を現して来ていたのだ。

 死の数日前に書き上げられていたという「DECO-CHIN」(初出:アンソロジー「異形コレクション-蒐集家(コレクター)」)は、鬼気迫るという言葉がふさわしいと思われる凄まじい作品。身体のどこかに奇形を持つメンバーからなるバンド「THE COLLECTED FREAKS」の圧倒的な音楽にノックアウトされた男が、バンドのメンバーとなるべく自らの両手、両足を切断し、性器をおでこに移植する手術を望む・・・という、悪い冗談、悪趣味なギャグのような話が展開するのだが・・・これが悪夢でも、ジョークでも、ホラーでも、コントでもなく目の前に突きつけられた世界として描かれる圧倒的な生々しさ、息苦しいような肌触り。

 殊に「THE COLLECTED FREAKS」の演奏シーンの凄さ・・・ロッカー・中島らもの頭にある最高の音楽が、膝も腰も背筋もガクガクいってしまいようなスリリングさで、息をしていることも忘れそうな天上的な美しさと静けさで描かれ、私を金縛りにした。

凄い。

FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ