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2010-04-17

整形前夜 : 穂村弘

「貴様、変装しているんだな。分かったぞ、貴様明智だろう。明智小五郎だろう」

「ハハハ……、やっと分かったか。お察しの通りだよ。君をこんな目に合わせる人間は僕の外にはありやしないよ。」    『人間豹』 江戸川乱歩


 ・・・なんという・・・。あぁ、これは、なんという・・・。

 パラパラとページを捲っている段階で、目に飛び込んできたこの言葉・・・「来れ好敵手」というエッセイ(乱歩の全集に寄せられたものらしい)の中で引用された『人間豹』のこの一節に、もう・・・胸を撃ち抜かれてしまったのだよ。

 殺人鬼・恩田とそれを追う探偵・明智小五郎の間に交わされる台詞の、何と危険で甘美なことか! 

 この台詞を目にしてしまった後では・・・、穂村氏には申し訳ないが、他の言葉はもう随分とうっすらとしか見えないのだよ。


 ・・・とは言っても、やはりドキンとさせられるのは、穂村氏が持つ「世界」の感覚。ただ『生き延びる』ためだけの現実=『生活世界』に違和感を感じ続ける『異次元への憧れマニア』穂村氏には、はっきりと存在が感じられるもう一つの世界があるらしい。穂村氏に限らず、『生活世界』とはズレた世界をまとっている人がいる。私には見えようのない世界だが。

「フィリップ・マーロウ」には「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」(『プレイバック』)という有名な台詞があるが、私はそれに加えてもうひとつ、「桃色の虫」が見え、幻の「鐘」が聞こえなければ、「生きている意味がない」と思うのだ。



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2010-02-17

短歌という爆弾 : 穂村弘

 大槻ケンヂは、『のほほん人間革命』「『大槻ケンヂ』という、世俗のアカにまみれた希薄な精神を内包する肉塊を、~略~ 全く別の存在へと変化させてやりたい。」と言い、穂村弘は本書で「世界と自分とを決定的に変えられるような何かはどこに隠れているんだろう。」と言う。

 その、止むに止まれる心の要求を突きつけられて、私は打ちのめられてしまう。

 世界を一変させるために、大槻ケンヂは幻覚サボテンを食い、下着パブでウハウハし、浮遊カプセルにプカプカし、穂村弘は短歌という爆弾を手にする。そうして、彼らは世界の扉を開く鍵、世界を覆す武器への道を自分の身体で進みながら、後に続く者たちにその在り処への痕跡を残す。

 でも、私は世界を変えるアイテムを手に入れられなくて困っているのではない。爆弾製造の動機~「変わりたい」「世界を覆したい」と願う心の強度が私には無い。

 「我々は『大過なく生き延びるため』にこの世に生まれて来たわけではない。」という穂村氏の言葉に、“え? そうなの?”と私は本気で驚いてしまった。私には爆弾を作らなければいけない動機が無い。

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2009-09-23

もしもし、運命の人ですか。 : 穂村弘

 “恋の始まり”や“運命を感じる瞬間”などなど、「ときめき」の周辺を手探りするエッセイ。

 それにしても穂村氏・・・なんと「ときめき」に貪欲な人であることか。

 一瞬が永遠にもなる次元への跳躍を引き起こす「ときめき」。日常の中に、そんな「ときめき」の可能性を探して、トクトクと胸を高鳴らせたり、胸を痛めたり。

 穂村氏は、いつ、どこに「ときめき」を発生させるかわからない世界への期待と不安で震えている。

 ああ! 何と世界に対して敏感で繊細で貪欲な! 穂村氏がよくエッセイに書いておられた「『現実』への恐怖」って、世界への大きすぎる期待の裏返しなんじゃないかしらん・・・と思う。そういう人じゃないと、歌人になんてなれないんだろうなぁ。

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2009-06-13

もうおうちへかえりましょう : 穂村弘

別れてしまった彼女について、漫画家・吉野朔実氏と穂村氏の会話。

吉 「そのひとと、きちんとつき合ってたの?」
穂 「うーん、なんとなく」
吉 「体が目当てだったの?」
穂 「いや、そういうわけでもなかった」
吉 「何か、割り切った関係という以上のこと、相手の心に触れて、揺さぶるようなことを云ったりやったりしたんじゃないの」
穂 「・・・うん」
吉 「何故そんなことをしたの」
穂 「体だけでなく、心も自由にした方が楽しいから」



 ・・・・・・黒い。

 しかし、穂村氏の黒さにひくよりも、女性とつきあおうとしている時の自分の心理をきっちり見切って言葉にできるその明晰さに舌を巻く。

 こんな明晰な人とは、私は怖くてとてもお付き合いなんてできないぞ~。「何故そんなことをしたの?」と詰め寄られても、“う~ん”と考え込んだ挙句「好きだったから」っていうのが精一杯なくらいのユルい人じゃないと無理。


 「人生の経験値が極端に低い」などと言って、震える子犬のようなふりをしている穂村氏って、したたかで面白そうな人だなぁと思ってたけど、やっぱりこの人・・・相当・・・だ。


 子供の名前について・・・ 祖母世代のある女性の名前「う」を前にして穂村氏は恐怖する。

 同世代の女の子たちの「幸子」「優子」には「幸せであってほしい」「優しい子であってほしい」という親たちの素朴な願いが感じられる。最近の子供たちの「怜央」「美佑」には、ただ幸せで優しくというだけでなく、世界でただ一人のヒーローやヒロインに・・・という親の願いのインフレ化を感じる。

 しかし、「う」は・・・

 私は「う」という名前に対しては得体の知れない怖さを感じる。名前に込められた願いがわからないということは、世界に対する働きかけの感覚が掴めないということであり、つまりはその時代の人間の心がみえないということだ。


 ほんの些細なことから世界に触れてしまう。そして、それに触れた自分の心持ちを、冷静に正確に言語化できてしまう。そういうことのできる人は、私にはちょっと怖い。


 でも、80年代・・・バブルの追い風の中で肥大するイメージ、自意識、「素敵さ」にがんじがらめにされて身動きが出来なくなっていたところを、ザ・ブルーハーツの「リンダ・リンダ」が救ってくれた・・・なんていううぶな告白には、“やっぱり可愛い人かも”と思ってしまう。・・・危ない。

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2008-10-18

求愛瞳孔反射 : 穂村弘

恋とは眩しくて、そして生々しい現象だな。
それが求愛ともなれば、もう… あ、恥ずかしい☆

その人を見つめるキラキラした眼差しは、ちょっと角度を変えれギラギラした視線に

フワフワした夢見心地は、どろどろした欲望に早変わり

その人への一途な想いは、端からみるとちょっとキモい思い込みだったり…

そんな瞳孔もひらきがちなあれこれに、愛という名のサーモンピンクのリボンをかけて☆

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2008-02-09

現実入門 ほんとにみんなこんなことを? : 穂村弘

 自称「人生の経験値」が極端に低い大人・穂村弘。「現実」が恐くてしかたがないほむらさんの前に、聡明で凛々しく美しい女性編集者・サクマさんが現れ、姉のように恋人のように、立ち竦むほむらさんの手を引いて、「現実」の世界へと旅をする。「現実」って言っても献血とか、合コンとか、モデルルーム見学、とか、占いとか、健康ランドとか、子供と遊ぶとか・・・。

 サクマさんと旅した「現実」は、やっぱりちょっと恐かったけど、何とかクリア出来て・・・。「現実」の中にいるサクマさんはキラキラしていて・・・。ほむらさんは、あんなに恐かった「現実」に、ほんの少しさわれるようになりました。

 って! なんだこれ? まるで良く出来た大塚英志のお話しみたいじゃないか? 「くもはち」の構図とそっくりじゃないか? ふ~ん、それで「現実」にさわれるようになったほむらさんは、ライナスの毛布・サクマさんを手放して、数年前には逃げ出してしまった「生活」を、ぎこちないながらもついに始めることになるんだ。ふ~ん・・・。

 「人生の経験値が低い」「現実が恐い」なんて言いながら、穂村さんは現実が嫌いなわけでも、現実に無関心なわけでもでもなくて、ホントのところは現実世界に興味津々じゃないですか! それなら「人生の経験値」なんていとも容易く上げられるじゃないですか? これからはどんどん浮世の垢のついたおじさんになってください。もう「経験値の低さ」はネタにできませんよ~ ふふふン。


 かつて、大槻ケンヂは「『現実』の恐怖に抗うには何が必要か? それは『テンション』だ。 無理から自分のテンションを上げ、人生を戦え!」と説いた。私は、「経験値の低さ」をちらつかせ、女性に手をひいてもらう穂村氏よりも、このオーケンの態度を断固支持する! (穂村さんも、おもしろいし、何となくしたたかそうで好きですけどね。)

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