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2009-05-27

THE CODE/暗号

「THE CODE/暗号」  監督:林海象

 そもそものきっかけは佐野史郎だった。映画「帝都物語」で異様な存在感を振り撒いていた佐野史郎に一撃で夢中になってしまい、彼の初主演作だという「夢みるように眠りたい」を探し求めたのだ。それ以来、林海象作品のファンにもなった。「二十世紀少年読本」「ZIPANG」「濱マイクシリーズ」・・・。


 「探偵事務所5」シリーズはネット配信分もあまり見ていなかったのだが・・・林海象監督の映画、やっぱり好きだ。
 
 品の良いノスタルジーと、鼻の奥にツンとした哀しさを残す可笑しみ。


 暗号解読のプロセスをじっくりと楽しませてくれる話かと思っていたが、暗号を解くことよりも、「暗号解読者(もしくは人類)にとって暗号とは何か」という問題がキーになっていたようだ。

 ヒロインの稲盛いずみ、とても奇麗だったけど、不幸を笠にきたワガママ女ぶりには、ちょっと感情移入できない。むしろ、女優より睫長くてバッサバサの菊之助に見蕩れる。

 古風でありながら何処と無く人工的な感じもする菊之助の容貌は、林海象作品に良く似合う。(古風かつ人工的という同じ理由で、鰐淵晴子、佐野史郎も林作品にはやはり欠かせないと思う。)

 菊之助も良いのだけれど、私が胸をギュっとつかまれたのは宍戸錠!

 隠しようもないほどに老いていて、動きに覚束ないところはあるし、目にも往時の(と言っても、私は氏の往時を知らないが)強さは無い。それでも、白いスーツを着込んで、ガンベルトを腰に巻き、あくまでも格好良い男を演じるのだ。スクリーンの中と外を超越した存在・・・「エースのジョー」というプライドと使命を背負った老俳優の放つ残照の前では、若い役者たちの光も翳んでしまう。

 物悲しいけれど、輝いていて、愛しい・・・林海象作品のテイストを一身に背負ったような役だった。

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2009-01-21

禅~ZEN

「禅~ZEN」 監督:高橋伴明

 良い映画でした。


 某美容整形外科のCMでは、現状に納得できないらしい女性が、

 「自分が嫌いなんて悲しすぎない?」
 
 と問うた後、

 「自分で決めた自分でいたいの。」

 と決意表明をして私をイラつかせるのだけど、「あるがまま」を見る苦しさと、そうすることでしか得られない平安を説く道元禅師の言葉は厳しく、また優しく、静かな救いを見せてくれるのだ。

 “ああなりたい”“こう在りたい”と願うことは人の心の美しい在りようではあるけれど、その願いに囚われて、あたりまえにあるものをあたりまえに、そこにあるものをあるがままに見ることができないというのは、美しいはずの人の心が持つ暗黒面でもあるのだな。

 在るものをあるがままに見る。その為にただ坐る僧たち~美しい禅の作法や立居振舞い、そういうものを描く映像の中で、勘太郎さんはごく自然だった。その自然さが、道元の言葉にぴったりと添うものだっただけに、所々に使われた(道元の大悟の場面や、月の演出など)CGは、ちょっとこの映画にそぐわない気がしたのだけど・・・。


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2008-08-27

スカイ・クロラ

「スカイ・クロラ」 監督:押井守

 視覚的なイメージにあふれた森博嗣の小説を、実際に目に見える映像にすることの功罪、それぞれにあったと思う。

 キルドレは、具体的な姿を持ったことで、随分とその性質が変わっているような気がする。キルドレ…大人にならず、永遠に子供のまま戦闘機に乗り空を飛び、殺しあいを続ける運命。小説での彼らは、自我を少しずつ手放して、どんどん軽く研ぎ澄まされていく存在で、そこからは善悪も、喜びや悲しみの感情も最小限に削ぎ落とされていたけれど、アニメ版の彼らはキルドレという自らの在り方に感情を揺らす。

 同じ姿、同じ癖を持ったまま、違う名前で繰り返しやって来るキルドレ…なんて、映像にしてしまうと「そのまんま」すぎて何だかなぁ…と思う場面もあったけど、映像で見る事で、改めて胸を突かれるところもある。

 カンナミが降り立つ基地の様子。ミートパイの美味しいドライブイン。偵察飛行で眼下に見る風景。大きな作戦の為、各基地から集結し空を埋め尽くす戦闘機、爆撃機。…あまりにも、小説を読んで頭に描いていた映像そのままで、何度か不思議なデジャヴュに襲われた。

 圧巻はやはり空中での戦闘シーン。文字で読むだけでは受取りきることができなかったキルドレの現実~彼らの日常として永遠に続く、空の上での殺しあい~が、文字で伝えられる分量を大きく超える情報量で流れ込んでくる。


 菊池凜子の、もったりした喋り方は、地上に落ちていきながらも、いつも飛ぶことを切望していた原作シリーズのクサナギのイメージに合わず、聞いててジリジリさせられたが、アニメ版のクサナギ~長く生きて、他人に干渉することを覚えたキルドレ~には似つかわしい声だったかもしれない。
 
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2006-10-26

太陽~The Sun

「太陽~The Sun」 監督:アレクサンドル・ソクーロフ

 1945年8月-絶望的な戦局の中、未だ戦い続けることを誇りとする軍部、連日空襲にさらされる東京。

 第二次大戦末期、地下の待避壕に身を潜め、「神」として時を過ごしていた天皇の内的ドラマ。

 「神」から「人間」になることを決意する天皇の物語は、一つ一つの小さな仕草や地下の迷路に迷う彼の姿を映すカメラの目線、絵画か絵本のような幻想的な映像とあいまって、一つの寓話のようにも見える。しかし、これは「昭和」というほんの数十年前の日本の歴史が内に抱えていたもの。

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2006-06-24

1999年の夏休み

監督:金子修介 脚本:岸田理生 1988年公開


 この映画を見たのはもちろん1999年より前のことで、当時「1999年」という言葉に感じた世紀末~何かが終わりを迎えるという感慨は、現在、過去のものとして見る「1999年」から感じるものとは明らかに違っていたと思います。「夏休み」は必ずいつか終わってしまうものを暗示している・・・?

 萩尾望都さんの「トーマの心臓」が原作となっており(萩尾望都さんは『「トーマの心臓」とはテーマが同じではないので“原作”というより“翻案”と言った方が良いだろう』と何かでコメントされていましたが)、少年の役を女性が演じ、そこに別の声優さんがアフレコするという手法で撮られています。

 舞台は森に囲まれた全寮制の学院。夏休みになって、帰るところのない3人の少年、直人・和彦・則夫だけが残されている。学院では「悠」という少年が湖に身を投げて死ぬとい事件が起きており、このことが寮に残る3人の少年たちの心に屈託を残していた。ある日夏休み中の学院に一人の転校生がやって来る。少年の名前は「薫」、彼は死んだ少年「悠」にうりふたつだった。「薫」の出現で直人・和彦・則夫の心の影が徐々に露わになり、一見平静だった生活が破綻し始める。・・・和彦に思いを寄せていた「悠」とだぶるようには和彦を道連れに湖に身を投げる「薫」。和彦は直人たちに助けられ命を取り留めるが、「薫」を見つけることはできなかった。

 再び3人での生活が始まったある日、「悠」と「薫」にそっくりの少年が学院にやってくる。今度は笑顔で少年を迎える直人・和彦・則夫。

  らせんを描くように繰り返される少年の日・・・この夏休みはいつ終わるのだろう。

 世界から切り離された少年達・・・内面の世界を見つめている彼らは、外の時間にしばられることなく終わらない夏を繰り返す。「大人になる」ことを意識せざるを得なくなった頃見た作品だったので、何度も繰り返しながら続く少年の内的世界には羨望の念を持ちながらも、もう自分にはやってこないものだなと寂しく感じたのを覚えています。
 
 膝丈パンツにガーターでとめたハイソックスという登場人物たちのファッションも、儚い少年の世界を美しく演出しています。

 この映画には大好きなシーンがあるのです。
映画の終盤で和彦が直人・則夫に語る幼い頃の思い出・・・幼い日とんぼを追いかけているうちに友だちとはぐれ一人ぼっちになってしまっていた。ふと見るとあたりはこの上なく美しい夕焼け。夕焼けはとても美しいのに、その美しさを話すことのできる人がそばにいない悲しさ、恐ろしさ・・・。バックには中村由利子の美しく切ないピアノ曲が・・・。見るたびに泣けてしまうシーンです。


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