2007-05-12

まどろむ夜のUFO : 角田光代

「まどろむ夜のUFO」
 大好きだったUFOへの興味を母親に封印させられて以来、“モニターの中から暗号を送ってくる”タレントを恋人にしてしまった「弟」。弟の友達で、生まれる前の世界を覚えている「恭一」。色んなことを知っていて理性的で、過剰なくらいに几帳面な大学の友人「サダカくん」。そんな面々と、弟や恭一の仲間達とサダカくんの間を行ったり来たりする「私」の話。

「もう一つの扉」
 いつも誰かと同居している「私」と、突然姿を消したルームメイトの「アサコ」と、「アサコ」と一緒に“無数のカッパを見た”という「眼鏡男」の話。「眼鏡男」がカッパを見たという、緑深い夜の公園の“特別な光景”が話の中心にある。

「ギャングの夜」
 部屋を探し続ける叔母と姪の話。“住める所が見つからなくて”部屋を探し回っているのか、“そこに住めることを確かめる為に”部屋探しを続けているのか・・・?

 収録された三つの作品を読んで、「前夜」というキーワードが浮かんできた。

 収録されている三作品はいずれも、人と人の間に、人と世界の間に、微妙な距離感を感じさせる。

 登場人物たちは、何がしか自分なりの真実とでも言うべき事柄を経験している。それが何なのかを理解しようとしているのだけど、未だよく解らないぐちゃぐちゃとした中にいて、自分と他人、自分と世界の境界があいまいになっている。自分の内なる世界にじっと目を向けているかと思えば、ずかずか無遠慮に他人の領域に入って行ってしまったり・・・。

 突然やってきた見知らぬ人を平気で自室に上げてしまったり、いなくなったルームメイトの服を当たり前のように身に着けて出かけたり、一方的におしかけた他人の部屋に囲いで仕切った自分だけのスペースを作ってしまう・・・そういう行為に、彼らの持つ他人(世間)との間の曖昧な距離感が象徴されているように感じる。

 ごちゃまぜのスープのような混沌と曖昧さの中から、それぞれの人がそれぞれ自分の形を成そうとしている。変化が起こる気配。そんな「前夜」の光景が、この三つの作品には見える。


 それにしても、登場人物たちが図々しく他人の部屋に上がりこんだり、友人の恋人と当然のように関係を持ったり、悪びれることもなく会社を無断欠勤したり、他人の部屋を勝手に物色し持ち物を拝借しちゃったりする様が自然で正当なことのように描かれているので、読み進めるにはそういう行為に対する生理的な嫌悪感を抑えておかなくちゃいけなくて、ちょっとしんどかった。 


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まどろむ夜のUFO

角田光代『まどろむ夜のUFO』(講談社 2004)評価:★★☆☆☆「言葉は嘘だな、言えば言うほど違ってくる」(『もう一つの扉』より)なんだか久しぶりに純文学的な作品を読んだ気がします。最近までは結構ミステリーとか恋愛とか分かりやすいものを読んで....

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