2007-05-05

一九三四年冬-乱歩 : 久世光彦

 昭和9年冬・・・「悪霊」の連載を中断した江戸川乱歩の突然の失踪。神経衰弱気味の乱歩が世間から身を隠すように逃げ込んだ、麻布箪笥町「張ホテル」での4日間のできごと。

 仮の名でホテルに泊まり、乱歩の名前から自由になった開放感とともに感じる一抹の寂しさ。かつての創作メモを眺め、またホテルの美しいボーイ・中国人青年の翁華栄や、推理小説に精通した美しい人妻・メイベル・リーとの出会いに刺激され、久しぶりに創作意欲に取りつかれた乱歩は「梔子姫」と題する小説を書き始めるが、隣室に感じる怪異や、まとわり付く正体不明の視線に悩まされ続ける。筆が進むにつれて小説と現実の間の壁が朧になり・・・。

 久世光彦氏が乱歩を見つめ、またあるときは乱歩自身になって書かれた小説。作中の記述や描写に、久世氏の著作「花迷宮」「怖い絵」の中でも書かれていた久世氏自身の少年時代の体験と重なるものが見え、乱歩に随分とご自身を投影して書かれたのだなと感じた。倒錯したエロティシズムとロマンティシズムに溢れた作中作の「梔子姫」も、乱歩の幻の作品というよりも、明らかに久世氏の匂いのする小説。

 作品全体に「屋根裏の散歩者」よろしく、天井や壁の節穴から乱歩をじっと見つめる久世氏の湿った視線を感じる。

 乱歩のチャーミングな描写も良いし、作品上の現実の世界と「梔子姫」の世界の境界がゆるくなり、ふとどちらの世界にいるのか解らなくなってしまう眩暈のような感覚・・・十分に楽しませてもらったのだが、乱歩が滞在する「張ホテル」202号室の隣室・201号室の怪異については翁青年とミセス・リーが推理するものの、尻切れトンボに終わった感じがするのが少し残念。

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ