2007-04-18

永遠も半ばを過ぎて : 中島らも

 電算写植オペレータのおれ・波多野善二
 三流詐欺師の僕・相川真
 大手出版社編集の私・宇井美咲

 ひょんな事から詐欺師・相川に居つかれてしまった波多野。相川の調子良すぎでむちゃくちゃな言動に不眠症気味の波多野は、ある日訳もわからず飲み過ぎた睡眠薬による意識混濁の中で、誰のものともわからない言葉を写植機に打ち込み始めていた。

 「永遠も半ばを過ぎた。・・・」

 波多野の打ち出した原稿で一儲けと狙う相川は、早速俄仕込みのウンチクで「ユーレイが書いた小説」の格好をでっち上げ出版社に持ち込む。編集者・美咲も加わっての詐欺はマスコミを巻き込んでの大事件に!

 詐欺師・相川の憎みきれないキャラと、胡散臭いと知りつつ彼を受け入れてしまう波多野が、ぐだぐだと落ちていくのか、浮上しているのか分からない日々を重ねるうちに、何だか事態が大変な方へと転がっていく。この感じ・・・町田康の小説の感触に通じてるような・・・。

 三流詐欺師達の言動のアホさ加減というか、可笑しさはドタバタとコメディ的なんだけど、読み終わって感じたのは、“砂時計の中を流れるさらさらした砂のような手触りの小説だな”という印象。

 印象的だったのは、写植屋として五千万もの文字を打ってきた写植屋・波多野の言葉

 「おれはね、いつも言葉に洗われるんだ。目からはいって脳を伝って、指先から流れ出て行く。~略~ ただ洗われているだけだ。おれは一本のチューブみたいなものだ。とても気持ちのいいもんだよ。」「写植屋にとっては、文学も肉の安売りのチラシも同じことで、崇高な言葉もなければ下等な言葉というのもない。~略~ 印象なんてものが残ると困るんだ。」

 こういう言葉や、ところどころに現れる作中作「永遠も半ばを過ぎて」のさらさらした感触が、ちょっと黒い笑いの成分の中でアクセントになる。

 作中、一番美しいと思ったシーン

 酒に溺れ気味に生き、「孤独というのは『妄想』だ。孤独という言葉を知ってから人は孤独になったんだ。」「人は自分の心に名前がないことに耐えられないのだ。」「私はそんなに簡単なのはご免だ。不定形のまま、混沌として、名をつけられずにいたい。」とつぶやく編集者・美咲が、波多野の「淋しい? 淋しいっていうのはどういうことだ。おれは知らない。」という言葉に、ぼろぼろと涙を流す場面。この場面が波多野の目線でそっけなく、不思議なものを見るように書かれているのが良い。 

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