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2018-01-20

大盗禅師 : 司馬遼太郎

『大盗禅師』 司馬遼太郎

 いや! 何だか奇天烈な小説だった(驚) 奇天烈といってもただ奇妙なだけじゃなくて、徳川政権がまだ盤石なものになっていない江戸初期を舞台にしたわくわくする冒険譚でもあるから面白くズンズン読み進められるんだけど、読みながら頭の中には「?」と「!」が増殖していくんである。

 物語最初から怪事にまきこまれる浦安仙八という兵法使いの若者が主人公であろうと思い読み進めていると、「やがて由比正雪が物語の主人公になる」と作者からの予告があり「!」となる。予告のとおり、後に軍学者由比正雪として名を馳せる男が登場し仙八と関わることになるのだが、いつまでたっても主人公が正雪に代わる気配はなく、ではやはり仙八が主人公か・・・と読んでいくのだが、仙八は作中に書かれているように『おのれというものを持ったことがなく』『そのつど境遇にながされて』生きる男であり、物語の最後までついに何か自分の意志をもって行動することはないのだ。

 主人公・仙八がこのような「おのれのない男」であるだけでなく、物語の重要人物ではある由比正雪やタイトルにその名のある日本転覆を目論む怪僧・大濤(盗)禅師も、いったい底の見えない茫洋たる大人物なのか、その場その場で都合のよい仮面を被り立ち回る薄っぺらなペテン師なのか(物語が進むにつれ後者の色合いが強くなるが)・・・、大物小物ふくめて物語を推進する登場人物たちの中にその人となり、意図、行動原理が一貫した者がいなくてもう無茶苦茶なんである。

 それでもいろんな状況にながされて仙八は海を渡り、亡明のために戦う英雄・鄭成功と出会い、倭の武人・仙将軍として大陸で派手に一戦したりして、意志をもった主人公のいないまま物語はどんどん拡大していく。これはもう、人々がただながされることによってドラマが生まれるスケールの大きな群像劇・・・なのかも知れない。

 結局、仙八が何を成したのかよくわからないまま物語はもやっと終わるのだが、そのラスト1ページほどはあたかも大作娯楽映画のラストシーンのように鮮やかで痛快で、その風味もまた奇天烈!なんである。



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