2017-11-04

グッドラック-戦闘妖精・雪風 : 神林長平

『グッドラック-戦闘妖精・雪風』 神林長平

 ある日突然、地球に侵攻してきた正体不明の敵・ジャム。その意図はおろか実体の有無さえ不確かな敵を相手に異星の戦場で戦う地球防衛の実戦組織・FAFの中にあって、戦場の情報収集を任務とする深井零は、仲間を見殺しにしても情報を持ち帰るという使命を負い、愛機・雪風とともに戦場を飛ぶ。

 他の人間に関しては無関心を貫き、戦闘機である雪風との全き一体感の中に自分の居場所を見出していた~謂わば幼児的な充足感の中に閉じこもっていた深井零中尉(本作では大尉)は、前作ラストで極限状態の中、自分を置き去りにして飛び去っていく雪風の姿を見た。雪風からの手酷い拒絶。

 自分の半身のように思っていた雪風が実は自分とは違う意志を持つ「他者」であったという現実をつきつけられた零は否応なく「他者」のいる現実の中に引き出され、かつて自分の一部だと思っていた雪風とも「意志を持つ戦闘機」と「それに乗る人間」として関係を再構築していくことになるのだが・・・。

 混迷の度を深め激化していく戦いの中で、雪風が零を唯一無二の相手として認め、求めるありさまは、あまりに甘やかな零の夢・願望でもあるような気がして、「まさかこの話、『すべては深井大尉の夢(または精神世界)の中の出来事』っていうオチになるんじゃ・・・」っていう思いがよぎる。まさかそんなことはないと思うけど。

 読み切れないジャムの意図、独自の意識を形成するコンピュータ群の意志、人間たちの思惑が交錯する本作ラスト、登場人物の口から「愛」という言葉が出た。茶化すわけではないけど、この作者が書く「愛」って何だか「水戸黄門の印籠」的だなって・・・。理屈や説明ぬきで信じることができるものっていうか・・・。これまで神林作品は他に二作しか読んでいないんだけども、そのどちらにも直接的な言葉として、あるいは間接的に感じさせるものとして「愛」が登場していて、「作者は『愛』というものにとても大きな信頼と希望を寄せているのだなぁ・・・」と思うわけです。

 しかし、戦いはこれからさらに苛酷なものとなっていく様子。はたしてそこに「愛」はありつづけるのか。


『戦闘妖精・雪風(改)』感想・・・http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-766.html


 

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