2017-07-08

ゆるりと江戸へ-遠眼鏡戯場観察 : 大原雄

『ゆるりと江戸へ-遠眼鏡戯場観察』 大原雄

 タイトルが良かった。

 『「歌舞伎の幾何学の勧め」-ひと味違う歌舞伎の見方』という口上で始まる本書。歌舞伎役者・中村時枝が舞台裏や楽屋から描いた役者絵を見たことで得た「違う場所から観れば違うものが見えるはず」という気付きをもとに、著者流の「幾何学」を使った歌舞伎「観察」指南書といったところを目指しているようだが・・・。

 「幾何学」というほど大層なものではなく、大道具・小道具といった舞台上に配された「点」、観客と役者を結ぶ「線」、舞台上の人物の関係性と観客を繫ぐ「多角形」、舞台上の時空を分ける幕という「面」・・・などの図形にことよせて、著者自身の歌舞伎の楽しみ方や気づきを思いつくままに記した雑記という感じ。

 一歌舞伎ファンの観劇雑記としては、劇場内の音や、色彩や、仕掛けに触れてこみ上げるワクワク感など、ふむふむと共感を寄せながら読むことができるが、読み漁っておられるらしい歌舞伎関係の書籍からの知識がそのまま透けてみえるような部分はあまり良い感じはしない。

 「鑑賞」への一助として、著者は双眼鏡などをつかって舞台上の細部を「観察」することを勧めておられるのだが、私は「好きな役者の顔がど~しても見たい!」という場合以外、オペラグラスなどは使わずに観ることにしている。オペラグラスなどを使うとどうしても視野が限られてしまって、舞台全体を観て楽しむことができない。毎月歌舞伎座通いができるならいざ知らず、年数回博多座での公演を観る機会しか持てない私は、双眼鏡で細部を観察するよりもやはり舞台全体を観たいと思ってしまう。

 観劇初心者といえども、好きで芝居を見ているものにはそれぞれ自分なりの見方、楽しみ方というものがあるんであって、正しい知識というものは必要だろうと思うけども、何をどう見るかについてまで色々意見されるのは・・・まぁ、余計なお世話っちゃあ、余計なお世話。

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