2017-06-24

愛の国 : 中山可穂

『愛の国』 中山可穂

 舞台の上でだけ息をする美しい生き物・王寺ミチル。美しいもの、愛するもの、恋しいものを前にした彼女はあまりにも純粋で切実で激しくて、その激しすぎる情熱で自らの身も心も生きる力さえもぼろぼろに焼き尽くしてしまう。

 『猫背の王子』では、そうやって美しく激しく燃え尽きていくミチルの姿が描かれ、続く『天使の骨』で彼女は漂白の旅の末、運命の女に出会い、自らのあるべき場所へ戻ってゆく力を得た。

 その後・・・。王寺ミチルを主人公とした物語の完結篇となる本作が出ていることは知っていたのだけど、穏やかな幸せとは程遠く、また傷だらけで厳しい茨道を歩いているに違いないミチルさんの姿を見るのが恐くて、辛くて、なかなか読むことができないでいた。

 そして・・・。運命の女・久美子と極上の舞台を生み出していたのであろう数年間の後、ミチルは記憶を失って倒れていた。

 桜の花びらに埋もれ、墓石を掻き抱くようにして倒れているミチル。夢か幻か・・・というような儚くも鮮烈な冒頭の場面であるが、物語は夢や幻ではなく、否応なく現実の中で生かされるミチルを描く。そして少しずつ確実に悪くなっている日本の現状を思うと、ミチルが対峙する悪夢のような現実は、作者が危惧するようにこの国の将来の姿でないとは言い切れないのかもしれない。それでも作者は、いくつかの美しいものを物語の中に描き入れてくれている。

 ミチルさんの物語は本当にこれで終わりなんだろうか? いつかまた、私たちの前に帰ってきてくれるのではないか・・・と思ってしまうのだけど。

  

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