2016-11-05

雷の季節の終わりに : 恒川光太郎

『雷の季節の終わりに』 恒川光太郎

 恒川光太郎の描く世界に触れると、いつもどこか傷つけられたような気持ちになる。だが、その傷は必ずしも不快なものではなくて、むしろ切なく懐かしい。

 この世の地図からは隠された地「穏(オン)」 ~ 春夏秋冬の他にもう一つ、雷の季節を持つ世界。雷の季節に起こる不思議は魔物の仕業。公然と語られることはない「穏」の闇。風の魔物「風わいわい」憑きの少年・賢也にふりかかる数奇な出来事と、その残酷な運命を生き延びた少年の物語。

 賢也少年は残酷な異界を生き延びた。しかし、彼の進んだ道は彼の意志や力によって拓けたものではない。圧倒的な力はいつも世界の方にあって、少年は世界の巡り合わせの中でいくつかの選択を強いられたに過ぎない。

 旅の終わりはどこか虚ろだ。異界を行く賢也と共にあったもの・・・風にのって様々な生を渡る不死の鳥~呪いであり祝福でもある「風わいわい」も去った。そして通り抜けてきた異界は怖ろしくも懐かしい。




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