2015-12-14

その日の吉良上野介 : 池宮彰一郎

『その日の吉良上野介』 池宮彰一郎

 元禄十五年十二月十四日、赤穂浪士の吉良邸討入り。「その日」をめぐる忠臣蔵異聞五篇。

 主君の切腹、藩の廃絶という凶事に見舞われ、吉良、上杉に猛然と襲いかかった内蔵助がもはや問うことのなかった内匠頭刃傷の理由。理不尽な暴力にさらされながら上野介が自問するその理由。別れの茶会のための道具を吟味しながら、ふと脳裡をよぎる、あの日、浅野内匠頭が差し出した逸品・交趾の大亀。勅使饗応の忙しさに紛れて、解かれることのなかった誤解。微かすぎて正すまでもなく放置された行き違い。・・・「その日の吉良上野介」

 昨年読んだ『四十七人の刺客』を含めての感想だけど・・・大石内蔵助があまりに冷徹、非情。己の大望のために他人の命まで使い捨てにしようとしている自分を、作中で内蔵助自身「悪人だ」と自嘲している風でもあるが、自己中心的といおうか、理不尽といおうか・・・それでいて、まぎれもない大物、そして同時にただの一人の男、凡夫なんである。

 「なんか嫌だ、この内蔵助。なんか怖い、この四十七士。」と思いながらも、どっかかすかに魅せられている部分がある。吉良、上杉を追い詰めるべく大石内蔵助が打つ巧緻で非情な策にも似た、作者の厳しい筆致にじわじわと退路を断たれ、息をつめて読んでいる。

『四十七人の刺客』感想・・・http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-701.html

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