2007-03-28

三四郎はそれから門を出た : 三浦しをん

 完全な活字中毒者だという三浦しをんさんによる、ブックガイド・カルチャーガイド・書物にまつわるエッセイの他、著者の日常や家族のことをユルい文章で綴ったあれこれが一冊にまとまっている。

 エッセイのネタのために、しをんさんは“どっこいしょ”とお出かけをしてみたり、普段はしない体験をしてみたりするのだが、彼女が起こすアクション・・・その行為の選択には、“あ、いいなぁ”とちょっとくすぐられる(そのあまり気合の入らないお出かけぶりがまた良い)。

 例えば、目白二丁目に中井英夫の「虚無への供物」の舞台なった「水沼邸」の面影を訪ねる・・・これなんて、私も上京の機会があればぜひやってみたい。

 他にも、本の中に出てくる、無性に美味しそうな食べ物を自分の手で作ってみるという試み・・・しをんさんは、「長くつ下のピッピ」が作った「しょうが入りクッキー」にチャレンジしているが、私はもっと安易に、スヌーピーやチャーリー・ブラウンがキャンプをするときに必ずやっている「焼きマシュマロ」を実践してみたことがある。小枝の先にマシュマロを刺して焚き火にかざして焼く。パリっこげた表面をカリっと噛むと、をとろりと溶けた熱々の甘~いものが口の中に広がって・・・ちょっとだけアメリカのキッズになれた気がした瞬間だった。

 
 ところで、三浦しをんさんの書くエッセイって概ね面白くて、好きなんだけど、ちょっと波があるなぁ~と思うこともある。

 プラス・マイナスどちらの方向に向かってであれ、熱く思いをたぎらせる事・モノについて彼女が語るとき、彼女の筆は暴走気味に文章をほとばしらせ、間の取りかたやちょっとした言葉の選択、表現のセンスが、ものすご~く私のツボを刺激してくれるのだが(本や漫画を“ふがふがと読む”なんて描写は彼女が使うからこそ味わいが深い。ああ、その鼻息の荒さ!!)、その一方で、“あれ? この言葉(事柄)は、まだそんなにしっかりと彼女の血肉に沁みていないんじゃないかなぁ?”って思わせるようなぎこちなさを、時々彼女の文章から感じることもある。このエッセイ集の中にもちょこちょこ見える『世界の美しさと残酷さ』『無機質なシステムに疲れきった臆病な心』『硬質な文章』『硬質な詩情』『寺山修司という魂が抱えていたさびしさ』・・・等々という言葉は後者の方・・・。そんな、数多ある書評に使われてるような言葉を、彼女に期待してるんじゃないんだけど・・・と、こっそり思ったりする。

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『三四郎はそれから門を出た』 三浦しをん

三浦しをんの脳みそを覗く ★★★★☆本好きは常に、何か面白い本がないか、アンテナを張り巡らせているものだ。新刊情報のチェックを怠らず、新聞の書評欄を丹念に読み、書店へまめに足を運んで棚を物色する姿は、

comment

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はじめまして。

私も、彼女のエッセイには、波があると思います。
文章力があるから、形にはなっているのだけど、情熱が薄いぶん、別に三浦しをんさんじゃなくても読める、というか・・・。
ある意味、正直な方なんでしょうね。
でも、毎回おもしろいエッセイを書くというのは、大変なんだろうなぁ、と思ったりもします。

TBさせていただきました。

ぐらさん、はじめまして。

あのテンションを維持してエッセイを書き続けるのは大変なことでしょうね。

これからは、小説の方にも期待したいと思っています。

『まほろ駅前多田便利軒』、ネットで見ると高評価なのですが、どうも私には直木賞を受賞するほどには思えなかったんですよね。
世間との隔たりに、少し不安を感じている今日このごろです。

ところで、やぶからねこさんは、いとうせいこうさんの本をよく読まれていますよね。
“おもしろいおっちゃん”というイメージしかなかったのですが、今度読んで見ようと思います。

私が読んだことのある三浦しをんさんの小説・・・「月魚」「白い蛇眠る島」「私が語りはじめた彼は」の三作の中には、まだ素直に“これは良かった! どっぷり楽しんだ!”と思えるものは無いのですが、しをんさんはこれからまだまだ変わっていくのではないかと思うので、そこに期待です。

いとうせいこうさんは・・・「ノーライフキング」との出会いが衝撃的だったので(もう15年以上前の話)、理屈云々ではなくて「いとうせいこう」という名前が私の中に強烈に刷り込まれちゃった感じて・・・以降、氏の著作はなるべく入手して読むようにしています。正直なところ、時々“・・ハズレ・・”と思う作品もあるんですが・・・。

過去の作品はもうほとんど新刊書店では手に入らないのが悩みでもあり、楽しみでもあり。
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