2015-02-14

芳一 : 堀川アサコ

『芳一』 堀川アサコ

 歴史ファンタジーっていうのかな? 時代が室町初期っていうのがめずらしくて面白いなと思った。

 足利将軍尊氏の嫡子・義詮と冷遇されてきたその異母兄・直冬。二人の確執に、この世に災禍をもたらす祟りの書『北条文書』をめぐる怨念が絡まって、亡霊や怪しのものまで暗躍して繰り広げられる血なまぐさい騒動。そんな命懸けの騒動に巻き込まれては、心ならずも事態収拾のために一はたらきしてしまう無頼の琵琶法師・芳一。

 主役も脇役も、登場人物たちが皆あっけらかんと暴力的で、けっこう無惨な流血沙汰も何か楽しげにじゃれあっているように見える。そういう明るくて素朴なワイルドさとかバイタリティって何か中世的かな・・・と思う。

 琵琶を弾いて語れば亡霊を呼ぶ芳一は小柄で猿顔、身が軽く、口の悪いがさつ者。茫洋として腹の底が読めないけれどかなりしたたかであるらしい義詮は「お願い」と「脅し」で芳一を猿まわしの猿のごとくに追い立てる。義詮や芳一を陥れいたぶる直冬や、『北条文書』にまつわる怨念のかたまりである永久男に清斗も邪悪なんだか、そうでもないのか・・・ひどいことをしても独特の愛嬌があって憎めない。

 面白いキャラクターたちだと思うのだけど、エンターテインメント小説としてはいまひとつ輪郭がはっきりしない。どんな目で、どんな眉で、鼻筋はどんなで、どんな口で、何を着て、どんな表情をして、どんな癖があって、どういう行動原理を持っているのか・・・そういうことが、もっとありありと目に見えるようだと、さらに話にのめりこめるのに。 

 キャラクターの輪郭が何だかはっきりしないと感じてしまう訳の一つは、キャラクターに名前がしっくり添っていないからかもしれない。「芳一」という名前からは主人公の芳一とはまったくキャラクターの違う「耳なし芳一」を強くイメージしてしまうし、怪しい傀儡師として名無しのまま印象深く登場していた男に、物語中盤でおもむろに「清斗(=清めねばならぬ悪しき器)」だと名乗られてもなぁ・・・。



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