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2007-03-17

怖い絵 : 久世光彦

 「怖い絵」・・・文庫版の表紙にも使われている高島野十郎の蝋燭の灯りに照らされるように、作中にぼうっと浮かび上がるのは、ロシア正教のイコン、ビアズリーやモローのサロメ、竹中英太郎や伊藤彦造の挿絵、ベックリンの「死の島」、甲斐庄楠音の描く死臭を纏った女。

 それらの絵画は久世氏の体験・・・殊に終戦を挟んだ前後10年、つまり氏の幼少期~20代初めにかけての体験の中で出会い、記憶に深く埋め込まれたものたちだ。戦中、戦後まだ世間は混沌としていて、妙な明るさがあるかと思えば、一寸先の見えないような不安に満ちている・・・身の回りに死や「怖いもの」が沢山あったのだろう。そしてまた久世少年は「怖いもの」にひかれてしまう質だった。久世少年の怖い記憶にはどこか性的なもの、死を想わせるものが潜んでおり、そしてそういうものに惹かれる氏自身の罪悪感、羞恥がからみついている。

 そういう、目を背けたいが、目を覆った指の間から盗み見ずにはいられない後ろめたさ、じめじめした感情がからみついているからこそ、体験の中に埋め込まれた絵画たちは「怖い」。

 「怖い」という感情が育む豊かに暗い世界が垣間見える一冊。 

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genre : 本・雑誌

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宵待草のやるせなさ#14・・・「へのへの夢二」久世光彦(筑摩書房)

久世光彦の小説について書くのはこれで2回目、以前読んだのが江戸川乱歩を題材とした「一九三四年冬-乱歩」、そして今回が竹久夢二を題材とした「へのへの夢二」。もしかしたら久世と興味の対象が非常に似通っているのか知らん、なんて思ったりもした。乱歩、夢二共にボク

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