2014-10-18

リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選 : 高原英理編

『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』  高原英理編

 「リテラリーゴシック」~「文学」の形をとって具現化された「ゴシックなるもの」。中世風の怪奇趣味に彩られた「ゴシックロマンス」の枠組みにとらわれず、「暗黒」「不穏」「残酷」「耽美」「可憐」を重要な要素とし、『人間の持つ暗黒面への興味』『恐怖や残酷さへの思惟』から生まれた短篇作品を集めたアンソロジー。

 日本文学における「ゴシック」の黎明期の作品として泉鏡花、他。猟奇と怪奇を語る戦前ミステリの中から乱歩、横溝、小栗虫太郎。『血と薔薇』の一群から澁澤、三島、塚本邦夫、中井英夫、他。60~90年代の幻想文学から須永朝彦、葛原妙子、赤江瀑、山尾悠子、古井由吉、皆川博子、久世光彦、他。そして、乙一、伊藤計劃、桜庭一樹、京極夏彦、小川洋子、大槻ケンヂ、編者である高原英理らによる「ゴシック」の現在。

 錚々たる名前が連なる中で、石の都の廃墟と化した世界で愛の内に閉じて歩き続ける二人の男女と二人を囲んで行軍する死の群れを語る、絵画的あるいはある種の舞踏的な山尾悠子の『傳説』~美しくも恐ろしげなヴィジョンをともなって想念が自在にうねる古井由吉『眉雨』と続くあたりが圧巻だった。

 実は古井由吉の『眉雨』は収録作品中いちばん訳のわからない作品だったのだが、いちばん酷く私を引っ掻いていったのもこの『眉雨』だった。

『いよいよ間近に迫った事態を、実現するよりも先に、現実よりも生々しく聞き取り、聞き奪って、阻止する。身の内の恐怖を、血のにおいよりも濃く煮つめて凝固させ、その中に敵の来襲を封じる。』

『厄災の到達をぎりぎりまで、見ることの恐怖、見る側の恐怖の力によって押し留め、その猶予の間に、寄せる敵勢の源にあるはずの、攻めの恐怖を鼓舞する熱狂に、なろうことなら、ひとすじの太い視線の針を立てる。』


 恐れること~恐怖する力を極限まで高めることで、恐るべきもの、厄災の到来を阻止するという着想に震えた。

 世界と自分自身の奥底にある暗がりを見つめ続けるものだけが「ゴシックなるもの」を作品として取り出すことができる。暗がりを見つめ続ける熱狂と、暗がりにあるものを見極め、暴く明晰さ。その明晰さが残酷・・・であるような気がする。


 ところで、本アンソロジーのおかげで気になっていた謎が一つ解けた。

 以前、こちらのエントリーにも書いたのだけど、梶井基次郎の「Kの昇天」について私は「Kが月へ登っていった後の浜辺には、Kの義眼が残っていた」という妙な記憶違いをしていた。

 なんでそんな記憶違いを? と思っていたのだけど・・・

 海辺の別荘に病身を養う青年、月、砂浜・・・そんな共通するイメージのせいで、「Kの昇天」と横溝正史の「かいやぐら物語」が綯交ぜになっていたらしい。「かいやぐら物語」の最後に描かれる月光を透かしたガラスの義眼が、私の記憶の中でKの義眼になっていたのだ。



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