2007-02-24

そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所 : 松浦寿輝

 家族や恋人、友人、身のまわりの誰かと言葉を交わし、ふれあう生活や時間の中には似つかわしくない作品群。まわりに人がいてもいなくても、世界が自分だけの感覚-触覚、嗅覚、視覚、味覚、記憶、時間感覚-で満たされているような時に読みたいと思うし、そんな時にふっと頭の中に思い出されるような本だ。

 さっきまで歓声が溢れていた遊園地の観覧車が、メリーゴーラウンドが突然動きを止めてしまう幻の記憶なのか現実だったのかも覚束ない記憶。何事も無かったようにまた動き出す遊園地の中で味わう疎外感。

 “うつぶせに倒れる”ヴィジョンにとりつかれたような男。何かへの捧げものでもあるかのように仰向けに体を丸めた虻の死骸。

 手触りや、匂いの感覚だけがなまなましく、そのおさまるべき場所や時間が見つからない記憶。

 自分の内にあるのか外にあるのか境界がわからないほどでありながら、よそよそしくもあるまわりの世界。

 この作品にはまってしまえば、その言葉によって生み出される皮膚感覚のようなものに溺れてしまいそうだが、そこまで踏み込めないでいると、なんだかつかみどころのない曖昧な感覚が悪意のようにも感じられてくる。

 作品自体を読むのは少々神経が疲れる類のもので、この作品の中で一番好きなのは目次のページだった。モーリッツの銅版画の一部分を挿絵として配した上に綺麗に並んだ4つの章のタイトルと個々の作品名。見開きになったこのページ、荒涼としたなかにもずっと眺めていたいような落ち着きのよさがある。

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