2013-09-14

ブッダはなぜ女嫌いになったのか : 丘山万里子

『ブッダはなぜ女嫌いになったのか』 丘山万里子

 「道成寺もの」への興味から、何年か前に「蛇になる女」関連の本をいくつか読んだときに、「蛇になる女」のルーツが仏教にあることを知り、仏教の女性に対する嫌悪の激しさ、極端さに困惑した。

 著者は音楽評論を専門とし、現代音楽を理解する上で必要な東洋思想を学ぶうちに、生まれたばかりの息子に「ラーフラ」=「邪魔者」と名付け出奔したブッダの姿に素朴な疑問を抱いたという。

 原典を読み込み、解釈し、作品を再創造するという音楽演奏の手法に倣って、著者は原始仏教経典に残された痕跡から、出家前…王宮でのシッダッタの青年期を、その身近にあった三人の女性 ~ シッダッタの誕生後間もなく亡くなった「まぼろしの母」マーヤー、マーヤーの妹であり亡き母の面影を写す養母マハーパジャーパティー、シッダッタに捨てられた妻ヤショーダラー ~ との関係を中心に考察する。

 あくまでもそれが推論であることを自覚しつつ、知的探求の領域を逸脱しないよう抑制をきかせながらも、仏典に記された言葉の中に、それを語ったブッダという「人」を見つけ出そうとする著者の眼差し、大胆にめぐらされる想像力によって語られる、愛に渇き、愛に囚われ、まさに「蛇になる女」たちの間で愛に苦しむ若きシッダッタの姿。

 ひとは、例えば「愛」などという抽象的なものに漠然と悩んだりはしない。具体的な誰か、このひととの愛にこそ、じりじりと悩むのだ。
 若きシッダッタが囚われた愛執や愛欲も、自分ではない誰かと誰かの関係や、そのさまを他人事として見て、愛執の苦しみとはこういうものか、などと了解したのではなかろう。明らかに自分と誰かとのどうしようもないかかわりの中で実感したことのはずだ。


 仏教が宗教として確立されている今では、どうしてもそれが説く抽象的思考にとらわれてしまいがちだが、このような著者の視点、言葉は、仏教という世界的宗教のルーツが一人の生身の人間であったことに気づかせてくれる。

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