2013-06-15

歳月なんてものは : 久世光彦

『歳月なんてものは』 久世光彦

 マレーネ・ディートリッヒ演じる女間諜の映画を見て、その安手の哀しいストーリーに声を忍んで泣き、そうして自分が泣いていることが嬉しかったという久世少年は、なんと大人びた、夢見がちでセンチメンタルな子供なんだろう。久世少年がディートリッヒの映画を見たという阿佐ヶ谷の木造平屋建の小さな映画館のことは、兄や姉、他の誰に訊いても知らないと言うのだそうだ。


 1章に「鮮やかな人たち」と題して、久世氏が関わった俳優たちの話、2章は本や映画や少年時代に見た光景の記憶「本と少年幻想」。

 久世氏のエッセイを読んでいると、はっとするような美しい言葉や、温度と湿度を持ってからみついてくる感傷的な言葉に出会う。

 『火灯しごろ』の銀座だとか、映画のラストシーンに『嫋々と』流れるウィンナ・ワルツの調べだとか、普段の生活では耳にも目にも口にもしないこれらの言葉に、瞬間、心が飛ぶ。私の知らないはずの風景や記憶を語るその言葉に、きゅうっと胸が痛く、切なくなる。

 そしてまた久世氏の言葉は、雑事にまぎれてちゃんとすくい取ることもしないままに忘れかけていた気持ちにすぅっと触れていくのだ。

どんなに哀しいだろうと思って、人は泣かない。どんなに嬉しかっただろうと、その気持ちを察して泣くのである。





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