2007-02-10

ハルモニア : 篠田節子

 脳の一部に負った損傷を補うように、音に対する超感覚ともいえる能力を発達させた由希。外部からの刺激を受け入れず、感情を表す術を持たないかに見える由希は、一度聴いた音を完璧に再現するという超人的な才能を持っていた。

 由希の可能性を引き出したいと考える臨床心理士・深谷の依頼で彼女を音楽家として育てることになったチェリスト・東野。音楽を通じて由希と接するうち、東野の中に由希と感覚を共有するかのような瞬間が生まれる。

 師である東野をはるかに凌駕する才能でチェロの技術を身につけていく由希だが、いつしか彼女のチェロはCDで耳にした音、夭逝した世界的チェリスト・ルー・メイ・ネルソンの完全なコピーを奏でるようになる。ルー・メイは由希の中に動かしがたいものとして存在していた。

 音楽の才能の伸びとともに、由希の中の負の力が現れ始め、その力は周囲の人々とともに由希自身を傷つけていく。

 さらなる音楽の高みを目指し、東野が由希に自分の中のルー・メイを追い出すことを求めた時・・・由希の負の力は周囲を巻き巻き込み、さらには激しく彼女自身の心へと向かい・・・


 作品中重要なキャラクターである由希は、彼女の周囲の人々(殊に東野の)キャラクターを投影させる役割のようで、意外と彼女自身の心理や人格といったものについては断定的なことが書かれていない・・・というか、彼女についてはすべて東野目線で描かれている。その分、彼女について色々と想像をめぐらせることが出来て良かったのだが、いくつか解せないことも出てくる。

 由希がなぜあそこまでルー・メイと一体化してしまったのか?・・・一応その原因と考えられることは深谷や東野の口から語られるのだが、作中でこれでもかという程にルー・メイのことが語られているのに比べて、由希がルー・メイにとりつかれてしまう動機の語られ方がひどく薄い感じがする。

 ルー・メイについて繰り返し語られたのは、東野のルー・メイへの無意識のこだわりを表すためだったのかなぁ? 由希とルー・メイにはもっとあっと驚く因縁があるものと思っていたんだけど・・・。

 最後に由希が浮かべたという歓喜の表情・・・東野とは共有する部分があったようにも見える由希なんですが、すべては自己完結した東野の思い込みでは?なんて考えることもできるわけで・・・そうだとしたら由希って・・・。

 この小説は以前テレビドラマ化されましたよね。私は見ていないのですが、中谷美紀は由希のイメージによく合ってると思います。

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