2013-02-09

戯史三國志 我が糸は誰を操る : 吉川永青

『戯史三國志 我が糸は誰を操る』 吉川永青

 董卓軍に攫われた少女・張鈴を救出しようと頑張る若き陳宮。救出はままならず、焦りばかりが募るある日、陳宮は張鈴と再会する。しかし、何者かとの情事の直後であるらしいしどけない姿の張鈴は、己の無力を詫びる陳宮を罵り、残酷な言葉を投げつける。変わり果てた張鈴に失望し、嫌悪を抱く陳宮。張鈴に抱いていた淡い想いは、一瞬にして深い怨みと殺意に変わる。

 ・・・それって要するに、

 「そりゃ、助けてあげられなかったけど、俺なりにものすごく頑張ったのに! その俺様を思いやることもできないのか! 少しは感謝しろよ、お前! ヒドイ! キ~ッ!」

 ってことよね? 相手は無理やり董卓の妾にされ、散々な苦痛と絶望を味わった少女ですよ。・・・う~ん。物語の序盤で見せつけられてしまった主人公・陳宮の、この「・・・サイアク・・・」としか言いようのない小物っぷりが、最後まで払拭できなかった。

 
 董卓が権力を振るう洛陽で、若き陳宮が曹操にその才能を見いだされ軍師となるところから呂布の死まで。曹操のもとで董卓を破滅させる策を練り、己では操りきれぬ曹操の大器を知るや、主を裏切って呂布のもとへと走り・・・主を変えながらも常に己が作り出すべき天下への意志を胸に抱く陳宮。乱世の大陸を舞台に繰り広げられる将たちの駆け引き、ダイナミックな戦いはもちろん面白い・・・「三国志」だから。

 その中で、覇道や王道を敷く名だたる武将たちではなく、詭道を操る一軍師の生き様を中心に据えたドラマは、ちょっとダークな刺激と色合いを帯び、「糸をひく者」として生きる陳宮の悲壮な背中には、“嗚呼、彼もまた乱世の将”とグッとくるものもある。でも・・・どうしても陳宮からは小物臭が消えないんだよなぁ。「俺」と「かつて(多分に独りよがりな)想いを寄せた少女」の問題が、「天下」の問題に直結しちゃってる気持ち悪さとか、陳宮の胸に在って、天下への思いを支えているのが、どうも自分に都合に良い妄想なんじゃないかってこととか。(だって、張鈴が命を捨ててまで伝えたかったことが「陳さん、頑張って」だけなわけないだろう。)

 己が思い描く天下のため、曹操を、呂布を操ろうとして操りきれず、全力をふり絞って策を練るも、結果的に数々の失敗と悔いを重ねてしまった陳宮の生き様を、ラスト数ページですごく清々しくまとめ上げてしまったのが、逆に残念な気がする。後悔を残し、汚れたままに終わらせてあげた方が、陳宮の男が上がったんじゃないかなぁ。





あ、文庫化されてる。 



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