2013-01-12

精霊の王 : 中沢新一

『精霊の王』 中沢新一

 夢枕獏『秘帖・源氏物語 翁‐OKINA』読了後のモヤモヤ(光の君が神仏巡りの果てに出会う精霊の王「翁」とは一体何ものであるか? とか)を解消するために読んだ本。


 幼い頃から、父の書斎の片隅に無造作に転がされていた奇妙な石たちが放つざわめき、精霊の風を受けていた著者は、やがて、柳田国男の『石神問答』でその石の神の来歴を知る・・・

 蹴鞠の名人藤原成通卿のもとに現れた「鞠の精」の話から語り起こし、著者は、芸能が行われる場にその回路を開く特殊な力に満ちた空間の存在を示す。さらに、室町時代の能楽師・金春禅竹が芸能を守護する特殊な「力」「空間」にまつわる思想を著した『明宿集』の記述を織り交ぜながら、能には「翁」として姿を現わすその「空間」に住む神=宿神の正体を探っていく。

 シャグジ、ミシャグジ、シャクジン、シュクノカミなどの名で呼ばれ祀られた神の痕跡、それを伝える神話や伝承を訪ね、立派な社や寺に祀られる神仏よりも古く、国家という権威の誕生以前に存在した「古層の神」とそこに息づく「野生の思考」が掘り起こされる。 


 「翁」といえば、あの髭を生やした老人の面、または髭を生やした柔和なおじいさんという姿かたちをもつ実態としてのイメージしか抱けなかった私にとって、「翁」とはすべての根源となる「空間」 ~その「空間」は具象の世界の背後にあって、「現在」として現れていない「過去」と「未来」を内包し、そこでは「無」が「有」へと転換し、「有」が「無」へと帰っていく~ であり、その「空間」に満ちた「力」 ~秩序の中で安定しようとする世界を揺り動かす破壊的なまでの創造の力~ であるというアイデアは全くの驚きであった。

 このような「翁」の在り様をイメージしつつ夢枕獏氏の小説を読んだならば、さらにスリリングに光の君の冒険を楽しみ、興奮できたかもしれないなぁ。




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