2012-12-22

妖説太閤記 : 山田風太郎

『妖説太閤記』 山田風太郎

 今年の六月に観た歌舞伎『時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)、武智光秀(明智光秀)が小田春永(織田信長)への謀反を決意する「本能寺馬盥の場」・・・本能寺に入った春永に、中国攻めの最中の真柴久吉(羽柴秀吉)から献上された「馬盥に轡でとめた錦木」の生け花。出世した今も、春永の馬の口取りであった頃の忠誠心を、そしてそこから取り立てられた恩を忘れないというメッセージを込めた贈り物。

 この久吉の臆面もない全力の媚び、そのいやらしさには心底引いた。光秀を苛め抜く春永も、あまりの屈辱に春永への怨念を抱く光秀も、結局は久吉に踊らされたのではないか・・・と身震いしてしまうほど、その場にいない久吉の存在感は嫌な感じだった。

 
 久吉=秀吉に対するそんなダークな印象を抱いてしまっていたせいか、「妖説」と銘打って語られるおぞましいこの秀吉の生涯こそ「真説」なのではないかと思えてならない。 

 明るさと愛嬌の陰に隠した奸智と、どす黒い策略で権力の階段を一歩一歩登っていく・・・己の惨憺たる人生を思う「猿」と呼ばれた男の胸にあるのは、ひと目見た織田家の市姫~天上のものに等しい美女を手に入れたいという燃えるような欲望。浅井長政、織田信長、明智光秀、柴田勝家・・・錚々たる武将たちが、コンプレックスと欲望にまみれた秀吉の狂夢に触れ、破滅していく。

 腹の中に権力と女への欲望とコンプレックスを煮えたぎらせ、友や主君を陥れる姦計を練りながら、愛すべき男の皮をかぶり、奇妙に歪みながらもあっけらかんと明るい・・・奇怪極まりない秀吉の姿が、作者の切れ味鋭い語りによって、まぎれもない真実になっていく。世界にハマる快感を存分に味わわせてもらったが、秀吉の姿に重ねて太平洋戦争時の日本を見ている作者の目には何かヒヤリとする。




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