2012-12-15

我、本懐を遂げんとす―忠臣蔵傑作選 : 縄田一男編

『我、本懐を遂げんとす―忠臣蔵傑作選』 縄田一男 編

 元禄十五年十二月十四日、赤穂浪士の吉良邸討入り。「その日」を待つ男たちの思いを描いた作品を集めたアンソロジー。

 本伝として、堀部安兵衛と細井広沢の交流を織り込み、討入り当夜から浪士の切腹までを描いた山手樹一郎「師走十五日」、列伝として、山田風太郎「蟲臣蔵」(大石内蔵助と田中貞四郎)、中山義秀「中山安兵衛」海音寺潮五郎「あさき夢みし」(神崎与五郎)、邦枝完二「江戸の雪」(間信六)、神坂次郎「虱の唄」(武林唯七)、赤坂好美「雪の音」(吉良義周)、また、異聞として柴田錬三郎「浅野家 贋首物語」、そして隆慶一郎の随筆「時代小説の愉しみ」を収録。

 秀吉の朝鮮出兵の際、捕虜として日本に送られた明の武人を祖父とする武林唯七の「虱の唄」は、異国人の血を蔑むもののいる中で、見事な“さむらい”になると誓って生きたその悲壮ともいえる生い立ちと、湯につかりながら祖父に教わった「虱の唄」~かなしみ、苦しみを耐えた異国の男が歌った唄~を口ずさむ、本懐を遂げた唯七の死を前にした静けさ、そして、吉良邸に討入り人を斬ったという唯七の猛々しく逞しい体と寂しげな眼差しを見つめる湯殿坊主の少年の激情の対比が劇的で美しい。

 一方、扇子売りに身をやつし上杉家の動向を探る神崎与五郎が、ふとしたことで関わりあった女に惚れられ想い乱れる「あさき夢みし」や、姉の婚家に居候し無念を噛みしめながらその時を期す間新六の「江戸の雪」は、女に惹かれ乱された心も、恩ある人たちへの不義理も、迷惑行為の数々も、大望を成就する「その日」にすべて晴れやかに清算される・・・そんな甘い感傷が感じられてちょっと嫌だったな。

 そして最近は、“嫌味な敵役”であってほしかった吉良方の物語にも心ひかれるのだ。理不尽な災厄に見舞われた上、幕府による過酷な処分によって貶められた吉良義周の悲憤と、「あの夜」以来耳をはなれない降り積もる雪の音を描く「雪の音」は静かに燃えるような物語だ。

 吉良の側から描いたものといえば、前に書いた皆川博子の『妖笛』や、史料をもとに吉良側の被害状況をつぶさに描いた杉浦日向子の「吉良供養」『ゑひもせす (ちくま文庫)』収録)も読みごたえのある作品。

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