2012-06-02

月桃夜 : 遠田潤子

『月桃夜』 遠田潤子 

 疼くような熱にじわじわと侵され、視界がぼうっと滲んでいく。安寿と厨子王の物語の中に人の心の闇を見せた遠田潤子氏の「水鏡の虜」は、ファンタジー短編のアンソロジー『Fantasy Seller』の中でも、その暗く燃える熱気が特異な存在感を放つ作品だった。


 櫂を失くしたカヤックで奄美の夜の海をひとり漂う茉莉香が海上を飛びつづける隻眼の大鷲に出会う「海のはなし」と、隻眼の鷲が茉莉香に語る「島のはなし」~遠い昔、薩摩支配下の奄美の島に生きた兄妹・フィエクサとサネンのはなし『月桃夜』も静かに滾る熱を帯びた物語だ。

 奴隷となり死ぬまでただ黍を育て、砂糖を作るフィエクサたちの汗と血にこもる熱。風が渡り、花は甘く匂い、緑濃い葉は爽やかに香る島を焼く陽射しの灼熱。島に射す眩い光と夜より暗い闇の、そして、フィエクサが魅せられる碁、サネンが憧れる針突(入墨)の黒白がなすコントラスト。人の世の情とは理を異にする神の世界と交わりながら、愛し、哀しみ、怨み、生きる、人の心の坩堝に滾る熱。命も身体も妹のために捧げた兄の、その兄のすべてを貪って生きると慟哭する妹の魂の熱。世界の終わりまで飛び続ける大鷲の隻眼に宿る熱。




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genre : 本・雑誌

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拍手コメントを頂いたので、少しコメントを・・・

この小説のもつ熱気というか、エネルギーのようなものが上手く伝えられなくてもどかしい・・・。

遠田潤子氏・・・何か気になるものを書く方です。
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