2012-03-31

ヴォイド・シェイパ : 森博嗣

『ヴォイド・シェイパ - The Void Shaper』 森博嗣

 自分が何者であるかを知らない一人の若い武芸者の旅。

 ゼンはもの心つく前から山奥の庵で師・カシュウと二人きりで暮らし、師に倣い剣の腕を磨きつつ成長した。師・カシュウの死とともに山を降りたゼンは、カシュウの痕跡をたどりながら、世の中を、人を自分を見、剣の立ち合いを通して様々に考える ~ 「強さ」とは、「生」とは、「死」とは何か。

 ゼンは絶え間なく思考する。理屈を構築し、検討し、他人の理屈を突き合わせ・・・。合理的と思える答えを探し、絶え間なく思考することで、自分という存在を量る。「すべては無」であることを知り、その中で変化しつづける自分を感じる。それは、「我思うゆえに我あり」的な生き方のモデルのようでもあるし、仏教の実践書のようでもある。思考し続けることを、つい面倒と思ってしまう私にはかなり息苦しいが。
 

 各話の扉に引用された新渡戸稲造『武士道』よりの言葉の方が、私には衝撃的であったかもしれない。

 なぜなら、もし愛情が徳の行動に結びつかない場合は、頼りになるものは人の理性である。そしてその理性は、直ちに人に正しく行動することを訴えるからである。


 何か・・・この言葉は色々と衝撃的だった。「愛」が正しい行動の原理たりえるということも、また、「理性」(=「義理」)が「愛」の機能不全を補い得るとされていることも・・・。


 

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