2012-03-10

弦と響 : 小池昌代

『弦と響』 小池昌代

 悪魔的なエネルギーと存在感を放つファーストバイオリン・鹿間五郎、美貌のセカンドバイオリン・文字相馬、大柄で才能豊かなビオラ・片山遼子、静かな情熱を秘めたチェロ・伊井山耕太郎 ~ 日本を代表する弦楽四重奏団として長らく活動してきた鹿間四重奏団が間もなく迎えるラストコンサート。メンバーの妻、かつての恋人、スタッフ、記者、マネージャー、鹿間カルテットの音楽を愛し、または偶然にラストコンサートの会場に足を運ぶ客たち。鹿間四重奏団の最後の日 ~ 交叉するさまざまな想い、人生。

 音楽を物語る作者の言葉は愛情と畏れに満ちて豊かだ。たくさんの修辞が施されているわけではない。使われている言葉はむしろシンプルである。しかし、「切ない」「美しい」という日常にあふれた言葉に、これほどドキドキしてふるえたのは随分久しぶりのことだ。

『聴いたあとには何も残らない。しかし記憶のなかには時が流れ去ったという、切ない感触の跡が残る。』 (「セカンドバイオリン」) 

『なんという美しい響きがこの世にあるのか』 (「ファーストバイオリン」)


 おそらく、ひとつのシンプルな言葉が、その本来の持てる力をもっともまっすぐに発揮するような空間が、それまでに紡がれた言葉の連なりによって作り出されているのだ。愛情をこめて生み出された空間にすっと置かれたその言葉は、驚くほど豊かに、また清新に響く。

 開演を待つ間の静かな熱を帯びたざわめき、そしてコンサートが終わったあとのホールに残る余韻・・・ 作者の言葉は、訳もなく泣きたくなるような切なくあたたかい感触を身体の内に呼び起こしてくれた。

 
 静かに降りしきる雪の中、鹿間四重奏団のラストコンサートが始まる。


 

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