2011-10-01

マルドゥック・スクランブル : 冲方丁

『マルドゥック・スクランブル』 冲方丁

 「ぐいぐい引き込まれる」「一気に読んだ」「読み出したら止まらない」という類のことが多くの読書系ブログに書かれているのを目にしていたので、表紙を開いた瞬間にストンとその世界に入り込めるとイメージしていたのだが・・・単語に振られたルビ、文章の区切り、施された修辞、文体のリズムに馴染めず、読み始めてしばらく経っても、作品の世界に同調できなくて疎外感を味わう。しかも、その原因が他でもない自分の加齢にあることが自覚されて、真剣にヘコむ。

 情人に爆殺されかけた瀕死の状態から、金属繊維の皮膚をまとい驚異的な電子干渉能力を与えられて蘇る少女娼婦。自らの記憶を消す毎に成功者へのステップを昇っていく男。破壊の意志を撒き散らす殺戮マシンの如き眠らない兵士。社会に存在するために自らの有用性を証明することを課せられた技術者と、あらゆる道具・武器に変身する金色のネズミ。・・・彼らの姿が目の前に見え、ビリビリくる刺激を感じ始めたのは、第一部の半ばまで読んだ頃だったか・・・。


 「愛されなかった子供」=少女娼婦バロットが、死にとても近い絶望の中から「生きる」という選択をする物語。

 「愛して欲しい」という願いを裏切られ続け、「生きる」意志を否定され続けてきたバロットは、ドクター・イースターと万能道具存在・ウフコックに命を救われ、彼らの存在によって初めて自ら「生きる」という意志を貫く勇気を得る。また、ドクターとウフコックも、社会に対して自らの有用性を証明することを課せられた者たちだった。そして彼らの戦いが始まる。

 ドクターの一風変わっているが誠実な思いやりと、ウフコックの煮え切らない優しさに見守られながら、自らの事件、そして彼女の意志を折ろうとする者たちと対峙するバロット。ハードな銃撃戦、カジノでの精神力の限りを尽くした賭けを戦うバロットに共感し応援するのが、人として真っ当な態度なんではなかろうかとは思うものの、遺憾なことに、私がバロットに感じたのは嫉妬だった。

 バロットが「愛して欲しい」と要求し、傷つけられた自分を回復しようとすることは正当なことだ。しかもバロットはとてつもない苦痛を耐えてそれを手に入れようとしているのだ。でも、でもでも・・・うまく言葉にできないのだけど・・・それが“正当である”ことに私は嫉妬してしまう。む~ん・・・。“間違ったやり方で”自分を回復しようとするボイルドや、自分が有用であることを証明しない限り存在を許されないドクター・イースター (彼らは、もはや生きることの正当性が自明であるとはみなされない ~もう「被害者」にはなれない者たちだ。)には自然と心ひかれるのだが・・・。




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