2011-06-11

チーズと塩と豆と : 角田光代・井上荒野・森絵都・江國香織

『チーズと塩と豆と』 角田光代・井上荒野・森絵都・江國香織

 NHK・BSの紀行番組と連動したアンソロジーだということは、読む前にちらっと目にしていたのだけど、それにしても、収録された4篇のうち3つまでもがとても似かよったトーンの作品になっているのはどういう訳だろう。

 スペイン・イタリア・フランス・ポルトガルの田舎を舞台に、その地に根付いて暮らす人々、土地の風土とそこにしみ込んだ「食」を描いた4つの短篇。

 何かを考え始める前から周囲にあり、その中で育ち、口にしてきたもの。身体と心の根幹を養ってくれた食べ物。深く刻み込まれた生まれ故郷の刻印。

 私もまた、広島の郊外で生まれ育ち、東京に出てやっと息をついたような開放感を味わい、九州で暮らしてその風土の違いを実感し・・・自分の中に、数年前まで意識することのなかった「お好み焼き愛」が芽生えているのに気付いて驚いたりしている。

 しかし、まだ故郷の町の窮屈さや、田舎の頑迷さを恐れる気持ちの方が強い私は、作中の主人公たちが、強い強い何かにひかれるように都会から生まれ育った田舎に戻っていく姿には、かすかな失望と反発を感じる。

 私が共感を覚えるのは、「アレンテージョ」の中のこんな言葉の方だった。

 僕は思うのだけれど、おなじものを見るというのは大事なことだ。べつべつの思考がべつべつの肉体に閉じ込められている二人のべつべつな人間が、それでもおなじ時に同じ場所にいて、おなじものものを見るということは。

 僕は思うのだけれど、おなじものをたべるというのは意味のあることだ。どんなに身体を重ねても別の人格であることは変えられない二人の人間が、日々、それでもおなじものを身体に収めるということは。

(「アレンテージョ」江國香織)





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