2011-04-20

f植物園の巣穴 : 梨木香歩

『f植物園の巣穴』 梨木香歩

 主人公である植物園の園丁が尋常ならざる歯痛のためかかった歯医者で、薬を差し出す手がどうも人間のものとは思われず、小窓の奥を覗いてみると犬が忙しく立ち働いている。犬はこちらの視線に気付いて、「皆まで言わずともよし、忙しいのだから」と言わんばかり・・・ このくだりを読んで“ぞくぞくぅっ”とする。“あぁ、奇妙な世界が入り込んできた。”
 
 しかし、その異界は、私の予想に反して、主人公の日常に静かに穏やかに交わるものではなく、不穏なものを湛えて、主人公を形も記憶も定まらぬ薄闇の世界にひきずりこむ。

 流れ、滞る水の気配。そこに育つ植物。千代という名の複数の女の面影。家にまつわる記憶。

 そのようなものがゲル状に溶け合い、神々の名や、神話的なものをちりばめた世界を行くうち、主人公の自然科学的知識と常識は変容し、彼は新たな「感覚」を得る。

 主人公の胎内巡りのような旅を共にするうち、私もなんとも頼りない、あやしい心持ちになってくる。

 この私は本当に正しく私であるのか?

 
 主人公の異界めぐりの旅は穏やかな日常へと帰って行ったが、私の中ではまだ何も完結しない。

 小さなうろが開いたような気配がする。




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f植物園の巣穴

f植物園の巣穴 梨木香歩著 『私』の転任した先はf植物園である。f植物園はf郷にある。f郷は坂の多いところだ。転任前から都合一年以上放っておいた虫歯の周辺の不穏な痛みは見逃せないところまできて...

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