2011-02-12

女と蛇―表徴の江戸文学誌 : 高田衛

『女と蛇―表徴の江戸文学誌』 高田衛

 古くから教導的な仏教説話に語られ、地獄絵に描かれ、民間に広く流布・定着した「蛇になる女」のイメージ。邪恋や執着のもたらす悲劇的な結末や地獄 ~“恐るべき情念”“穢れ”“邪悪”“怨念”・・・「女」と「蛇」の結合は忌むべきもののシンボルとして人々に記憶される。人々の心の中に刻まれたこのような観念を土壌として、あるいはそれを逆手にとって江戸文芸の中で新たに生命を得、妖しく、残酷な色彩に彩られた絢爛たる華をひらいた「女」と「蛇」の諸相。

 一読して・・・解らない。ちょっと戻って読み返してみても・・・やっぱり論考の主題となる事柄も、著者の言葉の意味も頭の中で上手く整理できない。著者が『雨月物語』の「蛇性の婬」に見た「蛇性」とは何なのか・・・とか、北斎描く「百物語」【しうねん(執念)】の蛇に著者は何を感じたのか・・・ そういうことが私には了解できていないから、その上で著者が語らんとしていることが掴めない。

 いずれ、本書で取り上げられたような江戸の伝奇物語を読んでみようと思う。本書で語られている内容について改めて考えるのはそれからとして、今は、この本を読みながらとりとめもなく思い浮かべたことを雑感として記しておくに止める。

 あまりにも男の側の事情ばかりを反映して作られているように思える仏教説話や地獄絵の中の「蛇になる女」・・・忌むべきものとして否定的に語られる女の姿、その地獄の話を、金を払ってまで熱心に聞いたという女たちの心理とはどういうものなのだろう? また、「蛇になった女」が執拗で残虐な復讐劇を繰り広げる江戸の伝奇物語はなぜそれほど熱狂的に受け入れられたのだろう?

 一切の説得に耳を貸さず、調伏をものともせず、あくまで相手の命が尽きるまでつきまとい、苛みぬく。追われるものにとってはとてつもない恐怖である。そして、そうまでしないと消えない情念の炎に焼かれ続ける蛇体の女の内も地獄。蛇体の女は現代にもいる。我が子を呑込まんばかりに愛する母もその一つの姿。子供にとっては身もすくむばかりの怖ろしさであろう。

 もともとは恋であり、愛であったものがなぜ蛇に姿を変えるのだろう。そうならざるをえなかった、女性たちの置かれた情況があるのだろう。「蛇」とは「怨み」や「執念」ではなく、抑圧された女の生命力の表れなのではないか?



 ところで、「蛇になる女」は怖ろしく忌まわしいだけでなく、歌舞伎や浮世絵に描かれるそれは、悲しく美しくもある。今、私の頭の中にある「蛇になる女」の姿といえば、昨年見た歌舞伎『金幣猿島郡』での亀治郎さん演じる清姫。“禍々しく、あさましい蛇の姿が、なぜこんなに美しいんだろう?”と気にかかった。

道成寺伝説が、いつまでも日本人の心に残るのは、そのグロテスクな異形の愛のおぞましさからではなく、ヒトを異形化させる「愛」という精神の反社会的な本質と、その反面の純粋さ(聖性)という、心の深層を暗示するからである。


 恋しい頼光への思いは報われず、頼光と七綾姫の恋の成就を見せつけられながら、恋敵である七綾姫への不忠者として命を絶たれた清姫。その無念はいかばかりか。  

 本書に『「相愛(あいおもう)」ものの罪障性』ということについて触れられた一節があって、“ふむぅ~”と思う。皆から祝福される清い恋であったとしても、その恋の成就が『他者に対する罪(犯し)の契機』となる。

 そんな罪の犠牲者でもあった清姫の心情には共感できる部分が多いだけに、蛇になってまで頼光を追うその姿は怖ろしいというよりも、むしろ健気で痛々しい。しかし、ここまでされたら蛇にもなるだろうと、清姫が怨みを残して蛇になる理屈が良く解るだけに、逆にその「蛇」となった姿に今ひとつしっくりしないものも感じてしまうのである。「蛇」とはもっと理屈にあわない、理解不能なものなのではないか?


 ・・・思いつくままに書いてみたけど・・・ 感じていることをちっとも言葉にできていない。もどかしい。



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