2011-01-22

海贄考 : 赤江瀑

『海贄考』 赤江瀑

 『門を出ると、外はなにやら騒然たる月のひかり』  (「月下殺生」)

 これぞ赤江瀑が見せる妖し。

 柝が入る。幕が切って落とされる。足もとがぐらりと揺れる。世界が…歪む。眩んだ目を開くと、そこには凄艶な青い月の光に照らされた舞台が出現している。

 「厭な晩だ」・・・父を亡くし新盆を迎える友のもとを訪ねたものの、何か気の滅入る落ち着かなさを感じる哲夫。連れ立って歩き出した月光の中、哲夫が耳にした友の言葉、目にした友の姿・・・

 目の前の光景が途切れ、呪縛が解ける。放心の後、ほっと息をついて気付く。騒然たる青い月の光がさした瞬間、この世ではない場所に連れ去られていたことに。そこで繰り広げられる、悪夢のように逃れ難く異様な出来事を見つめる間、息をすることも忘れていたことに。

 その他、表題作「海贄考」含む全七篇の短編集。 

 終わりに向かう旅の途中で私と妻が行きついたある漁村。入り組んだ路地に阻まれすぐそこに見える海に辿り着けない、何か幻覚を誘うようなこの地には、水死者を神として祀る慣わしがあった。(「海贄考」)

 四十代半ばにして真っ白な嬉子の頭髪。老婆のように生き、死までの時間を静かに暮らす彼女の心に棲み付いた硝子のライオン。(「硝子のライオン」)

 鳥も通わぬ遥か海上・王島に、五年も姿を見せぬ鯨を追う男達(「幻鯨」)

 ・・・他

 悲しみと諦めに覆われて静かに密かに、しかし激しく残酷にその身の内を焼き尽くす、またあるいは、抗い難く甘美で無慈悲な力を振るい人の心と世界を覆い尽くす狂気。

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