2011-01-15

レミング : 近藤史恵

「レミング」 近藤史恵(『Story Seller 2』収録)

『他人に無関心な王というのは存在しえるのだろうか』

 未だ王としては若い。暴君ではなく、又、人徳の王でもなく。

 チーム・オッジの単独エースとなった石尾豪。他の思惑を意に介さず超然としている石尾と、石尾を計りかね微妙な空気を醸すチームメンバーの間をとりもつべく動くうち、“石尾係”という役割に収まりつつある赤城の目を通して語られるチームの新しい王・石尾。

 新人時代には『ヒルクライム以外は興味ないんです。集団とうまくやっていく自信もないし、アシストするのも向いていない』(「プロトンの中の孤独」)と口にしていた石尾・・・だが、サイクルロードレースという競技を本能的に理解し、その競技自体と身体のどこかで繋がっているような。

 エースもアシストも同じ一つの役割と捉え、そこに感情を介在させることなく、場合によっては惜しげもなくエースの座を他の選手に譲り・・・しかし、自分が関わる場面では密かに、意のままに集団をコントロールする。

 『ちょっとアタックしてくる』・・・何かが一つ狂えば集団で海に身を投げてしまうレミングの群れのようなプロトンを率いて走っていく。石尾自身自覚しているのか、いないのか・・・暴君でもなく、人徳の王でもなく、それは「魔性の王」の片鱗を見るようで・・・。

 『サクリファイス』ではチーム・オッジの絶対的な王として、『エデン』ではかつてのチームメイト白石誓にかけられた重い呪縛として、周囲を圧する存在感を放ち続けた男・石尾豪。

 その圧倒的な存在感の濃さについ忘れていたけれども・・・そうだった、石尾豪は華奢といってもいいほど小柄な選手なのだった。その小柄な身体から立ち上り始めた魔性の気配。


 結局、何だかんだと石尾の為に立ち働いてしまう赤城に向かって、前髪をかき乱して笑いながら「そんなことするから、石尾係だって言われる」なんて台詞を口にできるところなんて、競技者としてだけではなく、人としてもやはり天然の魔性。

  

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ