2011-01-05

明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎 : 矢内賢二

『明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎』 矢内賢二

 キワモノ ~ 特定の時節・流行・出来事を当て込んで売り出されるもの。自然、その価値はごく短命に終わる。

 散切り頭、毒婦のゴシップ、異国人のサーカスに風船乗り、そして戦争・・・目まぐるしく変わる明治の世の出来事・事物を次から次へと取り込み、“本物そっくり”な、そして驚きにあふれた芝居に仕立てて観客の目に供す。

 ストーリーとしてはそれほど練られているわけでもなく、深いドラマ性があるわけでもない、そんなキワモノを、五代目菊五郎という天才役者の勘と身体は、事実の中に巧妙に嘘をすべり込ませ、嘘の中にふっと真実を立ち上がらせ、とびきり魅惑的な世界として完成させてしまう。

 嬉々としてキワモノ歌舞伎に取り組む五代目の姿を生き生きと描き出し、その天才的な芸の素晴らしさに思いをやる著者の筆に心地良く引き込まれ、見た事もない五代目への興味・憧れ・思慕をかきたてられる。

 歌舞伎は見世物の親玉として ~略~ 派手なキワモノを次々に送り出し、同時代の世間のありさまを鮮やかな手つきで切り取ってきた。

 「時代を超えられない」といってクサすのは、ちとお門違いではあるまいか。多くのお客に足を運ばせ、財布の中から木戸銭を払わせ、夢見心地で家に帰した。芸能としてはそれでひとまず大成功だ。


 下世話なエンターテイメントとしての歌舞伎を肯定するこのような言葉を、嬉しく、頼もしく読んだが、それが現代の歌舞伎に贈られる言葉ではなく、あまりにも浮かばれないまま忘れ去られている明治のキワモノ歌舞伎の成仏を願って手向けられた言葉であることは、悲しく、残念でもある。

 できることなら、キワモノとしての歌舞伎に、もう一度息を吹き返してほしい。伝統芸能でありながらキワモノであることは矛盾しないと思う。ぜひ、ぜひ、キワモノで私をワクワクさせてほしい。

 しかし、團菊の死後、明治のキワモノ歌舞伎が絶えてしまったように、歌舞伎という芸能は役者の身体、その個性に生き死にを握られているようなもので・・・キワモノの復活には、相当な力技を可能にする役者の存在が不可欠なんだろうなぁ。




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