2010-12-01

神無き月十番目の夜 : 飯嶋和一

『神無き月十番目の夜』 飯嶋和一

 慶長七年十月、徳川の支配が各地に及ぼうとする中、新しい領主による検地に抵抗し、一村ことごとくなで斬りの惨劇に見舞われた村。

 水戸城からの呼び出しに応じ常陸国小生瀬の村を訪れた旧月居軍の騎馬衆・大藤嘉衛門の眼前に広がる異様な光景から ~ ほんの数日前までの生々しい暮らしの跡をそのままに留めながら、人々が忽然と消えてしまった村に漂う血生臭い野戦場の匂い。村の奥に隠された谷間に累々とその無惨な姿を曝す夥しい数の屍。 ~ この悪夢のような出来事の顛末が語り起こされる。

 日々の暮らしとは関わりなく人々を襲う運命の変転。支配する者と支配を拒む者の間の激しい軋み。作者は硬派な筆致で権力を持つ者の理不尽さ、己の保身のみを考える者たちの醜さ、そして“無辜の民”である人々の限界~純粋であるが故の始末に負えない身勝手さや愚かさまでをも容赦なく描きながら、最悪の結末へと自ら走っていく人々の姿にそれぞれの人の持つ誇りや美しさを重ね合わせていく。

 悲惨な物語である。しかしその惨劇の顛末を書き上げるダイナミックな構成、強靭な筆の運びは、事態の陰惨さを描くだけでなく、単に善悪では割り切れない混沌の中にある人々の営み、荒々しく野性的な生命力を際立たせる。



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