2010-11-20

奇想と微笑-太宰治傑作選 : 森見登美彦編

『奇想と微笑―太宰治傑作選』 森見登美彦編

 以前もこちらのブログに書いたことがあると思うが、学生の頃から、夏休みが来る度に「『人間失格』を読もう。」と思い、文庫を買う→ひと夏読まずじまい→古本屋に売る、という一連の行動を何度も何度も何度も繰り返した末、遂に3年前の夏、『人間失格』を読んだ。3年前・・・ということでバレてしまうかもしれないが、小畑健描く表紙につられたクチである。

 そうして読んだ『人間失格』は私には如何ともし難い小説で、あまりの後味の悪さを何とかしたくて、『太宰治 滑稽小説集』を中和剤のようなつもりで読み・・・、世間と自分とのズレを冷徹かつ滑稽に描きつくした上で、困惑と羞恥に気を揉み、身を揉み、気弱に笑いながらも手には剃刀を握っているような男の面倒臭さを、“う~ん、遠巻きになら・・・”と、ちょっと眺めてみる気になったのである。

 太宰治が才気とユーモアとサービス精神に溢れる人であることも、太宰の滑稽の先に森見氏がいるらしいことも、先の『太宰治 滑稽小説集』で、何となく知らされていたわけで、森見氏が『特に若い読者のために』編んだこの作品集を、若くない私がわざわざ読む必要も無かったのかもしれないが、森見氏の作品は好きであるので・・・

 森見氏の作品のオモシロさに影響を及ぼしたのがはっきりとわかる太宰治のユーモア、サービス精神 ~ 最初の三分の一くらいは、ニコニコしながら読んだのだが、中盤に差し掛かった頃から少し・・・アレ? ・・・ヘンテコな小説がギュウギュウと詰め込まれたこの作品集がちょっと気味悪くなってくる。

 サービス精神の暴走、エスカレートする自虐行為。ニコニコ笑顔を血まみれにしてズイと寄せられたようで・・・ わ、わかった、まあ落ち着け、ちょっと待て、な、何もそこまで・・・。

 「服装に就いて」「畜犬談」のような、自虐がネタになっているものなら、まだしも安心して“アハハ”と笑えるけど、世間を見つめる目・自分を見る世間の目・自分自身を見つめる目・見つめる目を見つめ返す目が渦を巻いて襲い掛かってくるような「猿面冠者」「女の決闘」なんて、なんかもう・・・“うわぁぁぁあ~”って・・・

 “自分”というものに鈍感な私のような者が、“他人事”として読んですら、何かボディーブローのように効いてくる痛みがあるのに、鋭敏な自意識を持つ人たちがこの作品集を最後まで読んだら、相当に疲弊してしまうんではなかろうか?

 徹底して書く太宰も偏執的なら、それを編む森見氏も何か偏執的。『胸がキリキリして、居たたまれなくなり、~略~ワーッと叫びたくなる。』『これはもう恐怖小説である』とか言いながら、これらの作品を前にして、『世にもめずらしい宝石を一つ一つ置き並べるような気持ち』だなんて、・・・ちょっと・・・大丈夫ですか?


 

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「奇想と微笑 太宰治傑作選」森見登美彦 (光文社文庫)

目次 失敗園/カチカチ山ーお伽草紙より/貨幣/令嬢アユ/服装に就いて/酒の追憶/佐渡/ロマネスク/満願/畜犬談/親友交歓/黄村先生言行録/『井伏鱒二選集』後記/猿面冠者...

comment

管理者にだけメッセージを送る

No title

ふーん、そうだったんだと感心しました。
太宰も、森見も、再発見したような気分です。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

ありがとうございました

こちらからもTB送信させていただきました。
よろしくおねがいします。
プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ