2010-10-02

月読 : 太田忠司

 人は死ぬと皆「月導(つきしるべ)」を遺す。「月読」とは死者の遺した「月導」を読み解く職能者である。

 「月導」「月読」というものがごく普通に存在する世界。私たちの世界とよく似ているが、そこでは携帯もパソコンも普及しておらず、私たちの知っているミュージシャンたちが、私たちの知らない曲を残している。私たちのいる世界とは、軸を異にするもう一つの世界。


 男と見れば片っ端から誘惑する色っぽい金持ち女に、崇拝者たちに取り巻かれたわがままで美しいその娘。画家、実業家、政治家の息子と肩書きは立派ながら、一皮剥けば小心者で薄っぺらな娘の取り巻きたち。下品で強欲な医者。組織に馴染めない変わり者の刑事。自分探し真っ最中の少年たち。

 こんなキャラクターたちが、“私たちの”世界に登場したのだったら、「何だ、えらく安手のキャラが出てきたなぁ」と思ってしまいかねないんだが、彼らの存在する世界が、私たちの世界とはズレたところに軸を持っているせいで、登場人物たちの人間性含め、全てが少しずつ狂っているような違和感、ほんの少しゾッとするような落ち着かなさをかき立てられる。

 「月導」「月読」といったSF的、幻想的な存在よりも、ミステリーとしての展開よりも、乗り物酔いならぬ、世界酔いでもしたような眩暈・眩惑感が最も印象に残る作品だった。


 実は、コミカライズ版の方を先に読んだのだが、ストーリーは再現できているものの、今ひとつ魅力的に思えなかったのは、この世界のズレ感を漫画の上に表現しきれなかったからじゃないかと思う。

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