2006-12-06

花迷宮 : 久世光彦

 久世光彦氏の幼少時の読書体験に纏わるエッセイ。

 東京は阿佐ヶ谷、時は昭和十四・五年。すぐに熱を出す身体の弱い子供だった“私”は、自然、部屋で本を読んで過ごす時間が長かった。裏庭に面したその部屋の窓からは金木犀が香り、白熱灯の明かりをつけてもむしろ暗く隠れてしまう部屋の闇の中から、私はつねに「あの方」の視線に見つめられていた。

 勲章をつけ、眼鏡をかけた「あの方」の御真影。

 親の目を盗むように大人の本を読む私をいつも見つめている視線。すべてを見られていることに羞恥を感じながらも、「あの方」とつながっていたいという恋情めいた気持ち。甘く倒錯した感情を幼児ながらに氏は自覚していたらしい。

 以前、久世氏の「陛下」という小説を読んだことがある。「陛下」への想いをつのらせ、反乱に身を投じる陸軍中尉の話はこんなところにリンクしていたのか・・・。


 母の目を盗んで、“私”がその部屋で読むのは姉の本棚の少女小説、兄の本棚の冒険小説、父の本棚からは泉鏡花・漱石・岡本綺堂・・・そして乱歩、横溝、「人間椅子」に「真珠郎」。

 まだ5歳の幼児にすぎない“私”がそれらの本の放つセンチメンタリズムに、恐怖に、官能に、淫靡さに身をよじる。

 幼い“私”の記憶なのか妄想なのかも判然としない、まさに匂いたつような暗い花の迷宮。

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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

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