2010-08-25

妖術使いの物語 : 佐藤至子

『妖術使いの物語』  佐藤至子

 人外の術で敵達を翻弄し煙に巻く妖しのもの。盗賊、怪僧、陰陽師、怨霊、若衆にお姫様、異形の動物たち。主に江戸時代の文芸・娯楽作品に登場する、おどろおどろしくも魅力的な妖術使い・・・“「その筋のもの」が気にかかる”という人にとっては、これからさらなる深みにハマっていくための水先案内になるであろう一冊。

 隠形・飛行・分身・反魂、蝦蟇・鼠・蜘蛛・蝶々・・・それぞれに個性的な妖術使いたちと、その術が続々と紹介されているけれど、欲を言うなら、もう少しそれぞれの人物像等について掘り下げた解説が欲しいところ。限られた分量の中でなるべく多くのキャラクターを紹介するためだとは思うけれど、若干、キャラクターと技の羅列っぽくなっているのが残念。(最後に、妖術使いの物語が貴種流離譚の側面を持っていることや、妖術使いたちの異性装について等・・・妖術使いの人物造形にみられる特徴や、読者を魅了する諸要素について考察した一章が設けられてはいる。こういうトコ、もっと詳しく読みたかった。) 原典のあらすじ紹介や、せっかくの妖術発動の場面描写も、あまりにザックリ要約されていて味気ない。原典はきっと、因縁・怨念絡みあう過剰なまでにこってり濃厚なお話なんだろうけどなぁ。

 とは言え、豊富に収録された図版が、そのもの足りなさを十分に補ってくれる。ぎょろりと目を剥き、屋敷を押し潰す大蝦蟇。生首を咥えた大蜘蛛。振袖姿も艶やかな若衆を背に飛行する巨大な蝶。いやぁ~ こういう不気味なもの(もしくは禍々しいものと美しいものの組み合わせ)を見るとワクワクしてしまう生理ってどこからくるんだろう?

 大蝦蟇や巨大蝶って、歌舞伎の舞台でも見たことあるけど、絵で見る方が極彩色の悪夢のような“あり得ない感”満載でドキドキする。(昨年の「亀治郎の会」で上演された『忍夜恋曲者』の蝦蟇は見事だったがなぁ~)


 それにしても・・・ 画面を彩る美形キャラ。読者を魅了する不気味で愛嬌のある化け物や、ヒーローたちの超絶技。読み手のニーズ・嗜好に応えるために工夫を凝らす作者。熱狂する婦女子。人気に応えてどんどんと長大化する物語。絵草子と歌舞伎のメディアミックス。・・・現代の、あのマンガ雑誌をめぐる状況と、何やらよく似てる。



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