2010-07-14

そろそろ旅に : 松井今朝子

 駿府町奉行所同心の倅・重田与七郎、後に戯作者となり『東海道中膝栗毛』を著した十返舎一九の半生を描く長編。

 故郷を飛び出し、大阪町奉行・小田切土佐守に仕えた武士としての数年間と、大坂の材木問屋、江戸の質屋と二度の婿入りをしての町人暮らしが、田沼意次から松平定信の時代へと一変する世間の様子を背景に、大坂の人形芝居の仲間たちや、江戸の戯作者、版元たちとの交流をちりばめて立体的に息づいて描かれる。

 与七郎は若い頃からどうにも足元の定まらない男で、何処にいても何をしても、ついふらふらと彷徨いだしてしまう心はいつも旅の最中にあるようだ。反骨精神を持つわけでも、何か不満があるわけでも無いくせに、気がつくと世間の決まりごとをうかうかと踏み外している与七郎。

 良くも悪しくも世間の内で生きる人々 ~ 社会の規範に縛られた武士、浮世をしたたかに生きる町人 ~ の中で、世間の埒内におさまらない与七郎は頼りなくも自由で気楽な愛すべき人のように見える。

 しかし、世間並みであることから外れて生きるということは一方で地獄への道へとつながる不吉さと恐ろしさを秘めている。与七郎の旅の同伴者、幼馴染の太吉の大きな黒い影は、与七郎の旅が地獄の道行でもあることの象徴であった。

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