2010-05-26

ぶらんこ乗り : いしいしんじ

 “この世”と“あちら側”のちょうど間にぶらんこは立っている。庭の木の上に作ったぶらんこの上に座り、一晩中動物たちから聞いたお話をノートに書き続けていた男の子。

 あちら側とこちら側の境界で揺れるぶらんこの上で、この世の中の「本当のこと」を囁かれ続けた男の子の孤独と恐怖は誰の耳にも聞こえない。

 無条件の愛情とともに、無理解や不寛容にも満ちた世界で、揺れるぶらんこに乗った男の子は、誰かの手をずっと握っていることはできない。でも、この世が壊れてしまいそうな嵐の中で、ぶらんこを大きく揺すって男の子は大切な人の手を握った。


 男の子が乗っていた「この世とあっちがわとのあいだでゆらゆらとゆれている、くうちゅうぶらんこ」・・・何だか“曇天にはためく黒い旗”みたいに恐ろしい。このぶらんこ、私の目には見えないものであって欲しい・・・と思ったりして・・・。そう思うことこそが、この世の無理解と不寛容なのだと思いながら・・・。

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