2010-03-13

光ってみえるもの、あれは : 川上弘美

 江戸家の家族は、高校一年生の僕・翠と母・愛子さんと祖母・匡子さんの三人。僕の「父親」は存在しないが、ちょくちょく家に上がり込んでくる“遺伝上の父”大鳥さんはいる。翠が通う学校には「親友」といってもいいような間柄の花田や、彼女である平山水絵や、やる気があるようなないような中年の国語教師・キタガーくんがいる。

 自由に見える人も、強く見える人も、飄々として見える人も、気難しく見える人も、賢く見える人も、おろおろしている人も・・・翠も、その周りの人たちも、与えられた場所でそれぞれ真摯に生きている。だけど、それぞれが、それぞれに、ちょっとだけ嫌な感じ。自分にこだわりすぎで、自分の正しさに関して頑なすぎで、その正しさが、自分の親しい者達に向けて発揮されるという内弁慶な感じ。

 どこか欠けてたり、どこか過剰だったりする人が寄り集まって営む微妙にかみ合わない日々は、小さいけれど、何か気にかかる不協和音を鳴らしている。いつも一緒に居たって、わかり合ってるわけじゃないし、面倒くさいし、不興をかうのは怖いし、嫌いだ!と強く思うこともあるし・・・それでも翠はそんな友人や家族達と、翠の日常を生きている。

 何だかとらえどころの無い不穏なことを含みつつも、日常というのはだいたいいつも「ふつう」。「ふつう」にはおさまりきらなかった色んな気持ちや、日々の軋みの集積は、「ふつうじゃない日」として小さな事件を日常にもたらすけれど、やがてそれをも呑み込んで、さらに大きな「ふつう」の日が始まる。そんな偉大な日常を翠は生きている。

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