2010-01-09

地獄の思想 : 梅原猛

 日本人の中にある「苦」=「地獄」を見つめる目。仏教によって深く日本人に根付いた、深い内省により地獄を見る精神の在り様、そうしてそのような日本人の精神から生まれた文学、芸術作品を辿る書。

 第一部「地獄の思想」で語られる、日本の仏教における地獄観~特に天台思想は興味深く、もうちょっと深く知りたいという気持ちが起こる。今年は、いくらかでも仏教についての本を読むことを目標にしている。
 
 第二部「地獄の文学」は日本人の地獄を見つめる目から生まれた文芸作品~「地獄の文学」の系譜。

 『源氏物語』の登場人物たちが抱える煩悩の地獄。人の住む世界そのものが地獄の六道巡りと化した『平家物語』。妄執の鬼と化した死霊がこの世に彷徨い出る世阿弥の能。近松の心中物~世間並みの価値観を踏み外し、この世ではもはや生きられない男女の前にぱっくりと口を開く地獄。宇宙に遍く広がる生命を感じながら、その生命の中に地獄を見ずにはいられなかった宮沢賢治。自分の中で分裂する価値観、世界からの疎外感に苦しみ続けた太宰治

 時々歌舞伎を観る私は、どうしても近松の心中物に釈然としない気持ちを抱いていた・・・殊更に美しく描かれる主人公~心中へとひた走るダメ人間たち~に何を感じればよいのか戸惑っていたのだが、近松についての一章は、そんな私に一つの気付きをくれた。彼らは悲劇のヒーロー、ヒロインではなく、この世の落伍者、哀れな地獄の住人であったのだ。純粋な愛にしか価値を見出せない彼らにとって俗世の価値に縛られて生きることは地獄であり、世間に背を向けた彼らの行く先もまた地獄。道行の美しさは、彼らの地獄を見つめる近松の祈りか。


 地獄の文学を生み出してきた人々と同じように、自分の中にも地獄があると梅原氏は語る。自らの地獄を見つめて、宮沢賢治が詩や童話を書いたように、太宰治が小説を書いたように、梅原氏もご自分の中にある地獄のために、この書を書かずにはいられなかったのだろう。

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