2009-10-10

後宮小説 : 酒見賢一

 第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

 素乾国最後の皇帝・槐宗の後宮を舞台に語られる、槐宗の正妃となった少女・銀河の波乱の物語。

 銀河ら官女候補に施される“皇帝に愛され、子をなす為”の特殊な教育。妍を競い、友情?を育む女達。若く聡明で美貌の皇帝・双槐樹。宮廷内の権力闘争。反乱軍の蜂起~王位の簒奪。官女軍を編成して反乱軍に抵抗する銀河。その中で生まれる銀河と双槐樹のロマンス。

 際限なく豪華に重厚に~ドラマティックにも、陰惨にも、ロマンティックにもなり得るのに、あえてそれをしない軽やかさ。お話しが盛り上がってくる度に、飄々と物語の筆者が表に出てきは茶々をいれ、薀蓄を語る。銀河の姿が物語の中で煌めきを発すると、すかさず筆者がその高揚感に冷水を浴びせ、たっぷりと思わせぶりに登場した若く気高き美貌の皇帝は、大した活躍もしないままに物語の舞台から降りる。

 夢のようにゴージャスで、現実のようにクール。大掛かりな世界の仕掛けに、ウェットなドラマと乾いたユーモアの配合具合が絶妙な、とびきりの偽史。


 ところで、「ファンタジー」というと、妖精さんや怪物が棲む世界で、謎と魔法と剣と冒険っていうような、ガッチガチのイメージしか持っていなかったため、第15回の同大賞受賞作である森見登美彦「太陽の塔 」を読んだ時、「これのどのあたりがファンタジー?」と、解せない気持ちになったのだった。しかし、本大賞選評の中で、「ファンタジー」に「幻想」でも「夢想」でもなく「奇想」という言葉があてられているのを見て、何かちょっと“あぁ!”と思った。

 人間や世界を、常とは違う場所から見る。そうすることで現れる、固定した観念に縛られない異次元の世界。独創的な視点を持つことで日常との間に生じる「ズレ」が「奇想」=「ファンタジー」ということか・・・?

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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

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No title

よく創りこまれた作品でしたよね。
『太陽の塔』も積読中なので、早々に読みたいと思います。

No title

ドラマティックな要素を全て押えつつ、適度にこちらの予想を裏切ってくれる感じが快感でした。

『太陽の塔』も奇想といえば奇想小説。なかなか愉快でしたよ。
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