2009-09-16

斑鳩王の慟哭 : 黒岩重吾

 上宮王家の滅亡を題材にした長編小説。

 仏教に帰依し、慈愛の心を持って理想の政を行おうとした厩戸皇太子。その超人的な伝説ばかりが後世に伝えられる厩戸の、理想を追いながらも、我欲に囚われ、挫折し、苦悩する人間的な姿を描く。

 大臣・蘇我馬子との政治的駆け引き、権力に固執し、感情のままに振舞う推古女帝との確執、異母姉・推古女帝への怨念を募らせる母・間人王女への複雑な思いに懊悩を深める厩戸。

 政の中心からは次第に遠ざけられながらも、その学識も、人柄も、政治的能力も、周囲の豪族たちから一目置かれた厩戸の亡き後、山背大兄王は独り、斑鳩宮に孤立する。

 常に父の陰に隠れ、比較され、己の器の小ささを思い知らされ続けた山背大兄王の姿は、苦悩する厩戸の姿以上に痛ましい。

 馬子の権力を引き継いだ蝦夷、その子・入鹿への、周囲の空気が読めていないとしか言いいようのない反抗、批判 ~ そして、そのことが招く決定的な悲劇。蝦夷、入鹿との政争の中にあっても、山背大兄王が意識していたのが、最後まで父・厩戸だったという事が、哀れでならない。


 読み応えのある小説だったのだが・・・

 我々世代には、厩戸の物語といえば、「日出処の天子」が、あまりにも強烈に刷り込まれているのだ! この小説に描かれた人間・厩戸や山背は、確かに魅力的でもあったのだけど・・・ 私には、どんなに異端の厩戸像であったとしても、あの、美しくて、誇り高くて、恐ろしくて、悲しい厩戸の物語こそが本当のことであったと思えて仕方がないのよ。

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