2006-11-08

失はれる物語 : 乙一

 装丁の美しさが目を引いたので手にとってみました。

「Calling You」
 電話をかけてくれる人がいないから携帯電話を持たない女子高生。“携帯を持っている自分”をイメージしつづけるうちに頭の中にはくっきりと“私の携帯”が存在するようになり、ある日その携帯の呼び出し音が鳴る。

「失はれる物語」
 事故で右腕の肘から先の感覚以外すべて失った男。右腕だけの存在になってしまった彼のその皮膚の上で、妻はピアノを弾き音の無い音楽を奏でる。

「傷」
 僕の通う特殊学級に転校してきた僕と同じ11歳のアサトには他人の傷を自分の体に移動させてしまう不思議な力があった。

「手を握る泥棒の物語」
 泥棒をするために壁にあけた穴の中で掴んだのは“彼女”の手だった。

「しあわせは子猫のかたち」
 人とうまく話せない僕が一人暮らしを始めた家には、死んだはずの先住者と彼女の猫が住みついていて・・・

「マリアの指」
 電車に轢かれて死んだ鳴海マリア。僕は彼女の指をホルマリン漬けにして持っている。

 いきなり作品とは関係ない私事を書きますが・・・。中学から高校の頃にかけて、家に帰るのが嫌で軽く下校拒否をしていたことがあります。下校拒否になった理由は10代の時期にはありがちな、「親の干渉が鬱陶しい」ということで。

 私の母というのはある意味愛情深く、子供の先回りをしては危ないもの・有害なものを取り除き、進むべき道を整え、常に自分の力で子供を幸せにしてやろうと思っている人でした。でも、お察しの通りそういう類の愛情は子供にとっては無下に拒絶できないだけに重苦しいものです。その頃は「自分はいつも、母の『愛情』の名のもとに押し付けられる圧力に屈している」と自己嫌悪に陥り、「いつまでこの状況が続くんだろう?」と悶々としていました。

 「失はれる物語」に収録されている乙一さんの作品群を読んでいて、長いこと忘れていた、過去の不安で、不満で、今よりさらに未熟で、放課後の時間を学校でつぶしている自分の姿を“ああ、そんなこともあったなぁ”と思い出しました。

 自分の姿を作中の人物の誰かに重ねたというわけでは決してありません。作中の人物と私は似たところなど全くありませんから。ただ、作品を読んでいて昔味わっていた心のゆらぎを思い出しました。よくファンタジーなどに登場する、見る者の心にあるものが形となって映る鏡・・・それと同じような効果がある小説なのかな。

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失はれる物語 乙一

目覚めると、交通事故で全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていた私。 残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。 ピアニストの妻はその腕...

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