2009-08-08

非道、行ずべからず : 松井今朝子

この道に至らんと思はん者は、非道を行ずべからず (風姿花伝)

 「一つの道を極めようとする者は、決して他の道に迷ってはいけない。」・・・芸道を行く者を戒めるこの言葉が、ストーリーの進行につれ、徐々に重く響きだす。


 文化六年正月、炎上した中村座の焼け跡で、一人の男の死体が見つかった。火事で死んだのではないらしいこの男の死以降、中村座では陰惨な人死にが続き、小屋を支える者たちの間にも不穏な軋みが生まれ始める。

 事態を憂う太夫元中村勘三郎。老いて尚の美しさに、圧倒的な芸の力で、一座の中でも絶大な発言力を持つ立女形・沢之丞。沢之丞の二人の息子~大人しく芸にそつのない兄・市之介に、華やかだが我侭勝手な弟・宇源次。金主、帳元、狂言作者、桟敷番に楽屋頭取、道具方に下っ端役者・・・。歌舞伎の世界に生きる人々の、窺い知れぬ心の奥底には、何が蠢き絡まりあうのか・・・。

 一つ道を定めた者の恐ろしいまでの覚悟と、そこに纏わりつく無惨な悲しみが炙り出される。

 ・・・無惨ではあっても、定めた道を外すことなく歩んだ者は美しく在ることもできた。作者の目は、そういう、道を極めんと進んだ者たちだけでなく、美しく在れなかった者、非道に迷った者の心にも静かに注がれる。その愛情に溢れた視線に、じんと胸を打たれる。

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