2009-06-03

丹生都比売 : 梨木香歩

 水と銀の神・丹生都比売と天武帝の御子・草壁皇子の、吉野の地での、清らかで寂しく、ひっそりとした交感。

 壬申の乱前後を題材にした作品はいくつか読んだことがあるけれど、このように静かな物語は初めて。この時代を舞台にした作品で、主役になることが多いのはやはり中大兄皇子、大海人皇子、大津皇子 ・・・ 中大兄皇子・大海人皇子の活躍や、鵜野讃良皇女(持統帝)の女傑ぶり、大津皇子の悲劇が語られることは多くても、母の激しすぎる愛と期待も虚しく若死にした草壁皇子を中心に描いたものって、目にした覚えが無い。

 梨木氏によると、歴史に大きな跡を残した天智帝、持統帝は言うまでも無く、大津皇子も悲劇的ではあるにしても、その生き方は「主役の器」~激しく、熱く、輝かしい金色の光を放って生きた者たちなのだと。それと比べて、諦めに満たされたかのような草壁皇子の生き方は・・・。

 苦悩しながらも、眩い光の照らす道を歩いた王者たちの陰で、ひっそりとすべてを諦めて生きた人。そういう人の生を、そっとすくいあげるような物語。

 自分に向かって天が微笑むことは無いと知って、静寂の中で、かそけき銀色の光と戯れた皇子。それを思うと、草壁のすぐに熱を出してしまう体を、弓を握るとかぶれてしまう手を、ぎゅっと抱きしめたくなる。

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