FC2ブログ
2009-05-06

廃帝綺譚 : 宇月原晴明

 「安徳天皇漂海記」より連なる四つの短編。

 西海に沈んだ安徳帝の体を包み守る琥珀色の玉。その玉と同じ蜜色の光を放つ小珠を伝える大陸の皇帝たち。元最後の皇帝・順帝、明二代皇帝・建文帝、明末の崇禎帝。遥か昔に棄てられ流された日本の古の神の肉が変じたと伝えられる、蜜色に光る玉を介して、時も場所も超えてつながりあう廃帝たちの物語。

 追われ、流され、廃され・・・悲しみ、疲れ、荒ぶ皇帝たちの側にあって、夕日にも似た蜜色の光を溢れさす小さな玉。溢れる光の中に、廃帝たちは己の魂の求める場所を見たか・・・。


 「安徳天皇漂海記」から続く、この長い幻想譚を締め括る後鳥羽院の物語が特に良い。

 兄宮・安徳帝の身を包んだ真床追衾(まとこおうふすま)=水蛭子(ひるこ)の大玉に対する、淡島の小珠を手にした後鳥羽院。

 伊邪那岐・伊邪那美の第一・第二の御子として生まれながら、神の数に数えられることなく流された水蛭子、淡島、二柱の兄弟神のイメージを底に流し、神器と共に海に沈んだ安徳帝を背景に置きつつ、神器無くして即位した後鳥羽帝の、寄る辺のない心を幻想の中に描き出す。

 全てを失った後鳥羽院が、最後に拠り所とした歌をもって、実朝~日本の王として、荒ぶる安徳帝の魂を引き受け、自らの首をもって鎮めた鎌倉三代将軍に応えるクライマックスは、もう・・涙がほとばしります。


 この壮大な幻の物語・・・単なる絵空事 ~ 摩訶不思議な幻想譚、荒唐無稽な夢物語だと割り切ってしまうことができない。顕かには語られない秘められた歴史、秘められた物語としての真実味が胸を突く。

 教科書では何気なく目にしていた実朝・後鳥羽院の海の歌が、こんなにも荒々しい生命力、生々しい息づかい、哀しみを帯びた清々しさをもって迫ってくるとは!!!

FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト



theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ