2009-04-18

吉原手引草 : 松井今朝子

 吉原でも一二を争った名妓・舞鶴屋の葛城花魁に関る、ある事件についてお話は進みます。

 一体、葛城花魁がどんな人だったのか、その「事件」とはどういうものなのか・・・まったく分からないままに、読者は舞台である吉原の町に立たされます。

 吉原の町では、ふらりと現れたちょっと様子のいい男が、どうやらちょうど葛城花魁の話を聞いて回っているところ。この男の正体も、目的もわかりませんが、とりあえず読者はこの男の後にくっついて、次々と現れる事件の関係者たちの話を聞いていくという趣向。


 この小説の面白さは、この「話を聞く」ことの楽しさに尽きますね。

 「葛城花魁の事件」の謎を探る筋立てにはなっていますが、謎解きが物語りの主眼ではないでしょう。謎の真相は物語中盤で大体わかるようになってますし・・・。

 茶屋の内儀、妓楼の遣手、幇間に女芸者、船宿の船頭に吉原に通いつめた江戸や在郷の商人たち・・・様々な人たちが現れて、吉原の出来事と自分の暮らしを男に語って聞かせます。小気味よく、それがすでに一つの芸であるような、作られた街・吉原に暮らす人たちの語り。

 色んな視点、色んな言葉で語られる話から、多面的で多層的な吉原という街が、読者の目の前に組み上がっていく面白さ。複雑怪奇な街の息づかいが感じられるようで、スリリングです。

 最後に、話を聞き歩いていた男の正体が分かり、描き上がった絵にポンと目が入ったような清々しさで物語は終わります。読後感の良いお話でした。

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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

comment

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凝った時代小説ですね(笑)

やぶからねこさん こんばんは

お邪魔させていただきます。
この「吉原手引草」、最初に読んだ時「やられた~」と言った感じで夢中になって読みました。
吉原という特殊な世界に関わる様々な人間の人生模様を語りながら
「葛城」に何があったのか?という漠然とした謎を読者に悩ませながら物語は進んでいく。
この手法、ジャンルはちょっと違いますが何となくあの横山秀夫の名作「半落ち」を連想させてくれました。

時代小説でこういう凝った手法に出くわすとは思わなかったのでとても楽しんで読みました。
さすが直木賞受賞作といったところでしょうか(笑)

パズルのよう

摩緒さん、こんばんは。

松井今朝子さんの小説は他に2,3作読んでいるのですが、最初は「今まで読んだのと何か雰囲気が違うな~」ってちょっと戸惑いが・・・

でも、目の前でパズルが出来上がっていくようなお話に、次第に夢中に・・・

こういう手法の小説って読んだことがなかったので、新鮮でした。
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